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最上義光

「お前とは随分小競り合いを続けてきたけれど、今日で終わりにしようと思うんだ」
 弱々しい声だった。
 領地の譲渡を持ちかけられた時は半信半疑だったが、いかにも具合が悪そうに青白い顔で椅子に寄りかかる最上義光を見た白鳥は、口先では体調を気遣いはしたが、その内心は歓喜で満たされていた。
「義光、それは…」
「ああ、もうやめようと思っているんだ。これを…」
 サイドテーブルに、ことり、と置かれたのは、領地データが入ったコイン型のチップ。白鳥が、喉から手が出るほど欲しいものだった。
 最上は薄く目を伏せ
「わたしは」
 テーブルの上――コインを掴もうとした白鳥の手に
「今日で終わりに」
 とっ、と静かに短剣を突き刺す。
 白鳥の指はコインには僅かに届かず、テーブルに縫い止められて震えた。
「あ、あああ、」
 白鳥は徐々に激しく悲鳴を上げる。辺りに響く声の中、最上配下の者達が刀や槍を手に現れて白鳥を取り囲む。
「そう。お前をころして、終わりにしようと思っているんだ」
 絶望に揺らぐ相手の目を真っ直ぐに見ながら赤みがかった藤色の目を細め、最上はわざと蒼白に化粧をした頬に笑みを浮かべ、


 ――受け取った、自らの刀を振り下ろした。



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