組城
豊臣の広大な『庭』にある、静かな池のそばに佇む木陰のベンチでわざわざクッションを置き横になってうたた寝を楽しんでいた加藤清正の頭に、ぽす、と何かが触れた。
意識がふわりと浮上するが、清正は目を開けようとしない。
「……清正」
思った通りの声。自分を探していたらしいその声の主は、もう一度、ぽす、と清正の頭に手の平で触れた。
「…新しいパズルだよ、清正」
途端に、ぱち、と目を開き、清正はむくりと身体を起こした。
桃茶色の髪に、優しげな緑の瞳──藤堂高虎が清正を見下ろして苦笑している。
「早く言ってよ」
「ほら。あんたの分」
揃えて差し出した両手に築城パズル用の箱型画面を開くと、高虎がそこへざらざらと細かいピースを流し込む。
ピースが溢れんばかりになっている画面を両手でざらざらと揺らし、清正は満足気に笑った。
隣に座った高虎も、自分の画面を開き、半分以上組み上がっているパズルの続きを始める。その手元を覗き込み
「高虎のパズルでできるお城、あたし好きだな。強そうで」
少し寝乱れてほつれた髪を耳にかけて、そう言った。
「私も清正が作った城は好きだよ」
「ほんと?」
ふふ、と嬉しそうに笑いながら広げた画面へピースをぶちまけた清正が、すいすいとピースを組み合わせていくのを、高虎は興味深げに隣から覗き込む。
「…いつも思うけど、速いよね」
「そう? 丹羽さんはもっと凄かったじゃない」
「あの人は別だよ…」
やや傾いた初夏の太陽が、木陰のベンチに座った二人の上、葉の間からちらちらと揺れている。
ぱしゃん、と池で魚が跳ねた。
20130330
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