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シークレット・ガーデン
 

 目のくらむような夏の白い光が、中華風の飾り窓の格子をくっきりと床に影として焼き付けている。その傍ら、藤で編んだ揺り椅子に色の白い少女が光の方へ顔を向けて眠っていた。
 一つに束ねて編んだ長い三つ編みを肩から白い夏のセーラーの胸元へ流し、その先には涼しげな青緑のリボン。些か長いスカートから伸びる、投げ出された脚は素足のままで、床に反射する日の光にいっそう白く透き通って輝いていた。
 ふと、きぃ、と金属が立てる小さな音で少女は目を覚ました。汗ばんだ額に貼り付いていた前髪を、誰かの手が優しく避ける。開いていた窓が閉じられて、小さな部屋は薄暗くなった。
「また一人でこんな所へ来て…」
 高い位置から降ってくる静かな声。少女は一度開けた目をもう一度閉じ、ふ、と笑った。
「秀吉様が捜してましたよ。通信まで全部切ってますね?」
「……ひとりになりたかったのよ。それに、あなたが来るだろうと思って」
「来なかったら?いつもの小太刀一振りでどうにかなる帰り道じゃない」
「来ると思ってた」
 すう、と開いた目は甘茶色をして美しい。身体を起こすと、藤の椅子が少し軋む。
 いたずらっぽく微笑む、その視線の先で背の高い少女が腕組みをしたまま諦めたように息を吐いた。
「…帰りましょう、秀長様」
「帰りましょう。お願いね。高虎」
 ドアの外は、細く、暗い道。
 そこには鬼が棲んでいる。





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