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星と石と
 


「三成を初めて見たとき、夏の夜に見た天の川を思い出した」
 兼続が言うと、三成は、きっ、と眉を寄せた。誰もが「不機嫌そうな」と形容するだろうその表情がただの「困惑」だと、兼続は知っていた。
「三成には、胸がいっぱいになるような満天の星の光が似合う」
 三成の隣に座したまま口を噤んでいる吉継は、兼続を見もしない。
「ねえ、大谷さん、そうでしょう」
 夜明け前の闇の色をした吉継の目が兼続を映した。
「星か。私は、三成にはもっと近くて確かな――金や銀や、…ダイヤモンド… 夜明けには日の光に消えてしまう小さな瞬きより、そうしたものが似合うと思うが、直江殿」
 ぞっとするほど甘い声で吉継は言う。また、きっ、と眉を寄せて、三成は唇を歪めるようにしてかすかに笑んだ。
 それが「肯定」であり「恥じらい」であり「甘え」である事を、兼続は知っている。




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あきゅろす。
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