レーザービーム
今まさにこの世界を統べようとしているとは思えない、薄い肩と小さな背中だった。
高い位置で結んでいた髪は少しうねるように癖がついて、現実世界とリンクした人工の夜空を見上げる後ろ姿を覆い背中に流されている。
その背中に、光秀はそっと厚手のマントをかけた。
中国エリアには秀吉、勝家をはじめとする北陸エリア、と配下の者達はそれぞれの持ち場で戦闘を行っており、信長のそばに居るのは、今は光秀だけだった。
薄い雲に遮られた月はぼんやりした輪郭ではあったが、ほぼ満月に近い円を描き、皓々と輝いている。
「光秀」
不意に、信長が、珍しく囁くような声で光秀を呼んだ。
「はい」
「私を憎んでいるか」
とろけるような金色の光が、互いを見ない二人の瞳に溶け込んでいる。
光秀はややあって
「はい」
静かに答えた。
信長は、ほんのかすかに笑ったようだった。
「そうか」
それきり、二人は黙ったまま同じ月を見上げる。
星は見えない。
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