present for... Sweet Valentine's Day.(クレシャ) 2月14日。 「…あ。」 クレア・スタンフィールド(現フェリックス・ウォーケン)は、自室のベッドでがばりと跳ね起きた。 急いでシャワーと朝食を済ませると、部屋の中をぐるぐると歩き回る。 今日は、2月14日。 何回カレンダーを見なおしても、2月14日。 本来ならば愛する人に贈り物をする日であるのにも関わらず、クレアはきれいさっぱり忘れていたのだ。 ――あぁぁあ、すっかり忘れていた…俺としたことが…愛するシャーネへ愛を贈る日を忘れるだなんて…!! くっそ、これも全部、昨日遅くまで仕事をさせたアイツらが悪い!! 昨日のターゲットに全ての責任を押しつけると、再びクレアは考え始める。 ひたすら悩んでひたすらぐるぐる歩き回ったあと、クレアはぱちんと手を軽く打ち鳴らすと、上着を引っ掴んで玄関を出た。 *** ミリオネア・ロウのジェノアード邸宅の自室に、彼女は居た。 ベッドに腰掛けて、うとうととしている。 この2月とは思えない暖かい陽気では仕方がないか、と苦笑しつつ、クレアは窓を軽く叩いた。 コンコン、という音にはっと覚醒した少女は、クレアを見ると嬉しそうに微笑んで窓を開けた。 (いらっしゃい、クレア) 「久しぶりだな、シャーネ」 そう言って、ぎゅっと抱き締める。 数日ぶりのシャーネの抱き心地はやっぱり柔らかく、自然と頬元が緩んでしまう。 今すぐキスをしたい衝動に駆られるが、クレアはぐっと我慢して身体を離した。 「…シャーネ、今日が何の日だか分かるか?」 (……?) もしかしたら、彼女は知らないのかもしれない。 「今日は、バレンタインデーなんだ」 (ばれんたいんでー…?) 「“Saint Valentine's Day”だよ。バレンタインとかいう人が、愛と結婚を推進した日らしいぞ。この日は愛する人に愛を伝えるんだ」 ちょっと間違った解説をしながらも、クレアはシャーネに説明した。 「だから、俺もシャーネに愛を贈ろうと思う」 そして、真正面から見つめると、 「シャーネ、好きだ。愛してる」 とびきり甘い声で囁いた。 それだけで、シャーネは顔を真っ赤に染める。 (…ありがとう…) 「どういたしまして。…ただ…」 そこでクレアは少し顔を曇らせた。 「俺、プレゼントが用意できなくてさ。――だから、シャーネに欲しいものを訊こうと思って」 なにが欲しい?と訊ねられ、シャーネは暫しの間考え込んだ。 そして顔を上げると、口を開き――やっぱり閉じた。 「どうした?なんでもいいぞ?」 それでもシャーネは恥ずかしそうに俯いている。 「シャーネ?」 クレアが覗き込むと、シャーネは頬を染めて、なにやらもごもごと口を動かした。 その内容をクレアはいつものように読み取ると、彼自身もほのかに頬を染めた。 いつも控えめな彼女が、こんなことを言ってくれるなんて。 (――クレアの…キスが欲しい) ――いいのだろうか。 プレゼントは貰ったほうが嬉しくなるものでなくてはならない。 これでは、自分のほうが嬉しいのではないだろうか。 「…そんなんで、いいのか?」 訊ねると、シャーネは嬉しそうにこくりと頷いた。 ――ああ、花束よりも、お菓子よりも、 なんて甘いバレンタインデー。 彼はゆっくりと彼女に唇を近付ける。 ああ、なんて甘い、 Sweet Valentine's Day end. *** ぜんっぜん甘くない…!! しかも14日に間に合わなかった……orz フリー期間は、2009.3.1をもって終了しました。 2009.2.14 あいこ. [*back][next#] [戻る] |