novel
Why?(クレア←シャーネ)
「シャーネはクレアさんのどのへんが好きなの?」
不良集団のリーダーで顔に大きな入れ墨をもつ男の質問に、私は目を見開いた。
どのへんが、というのは、正直難しい質問だ。
私はクレアの全部が好きだから、“どのへんが”なんて選べない。
そんなことを考えているうちに恥ずかしくなってしまい、私は筆談もせずに俯くことしかできなかった。
「じ、じゃあ、シャーネはどうしてクレアさんのことが好きになったの?」
私は、その質問に再び目を見開いてしまった。
“どうして”
きっかけは、あの列車。
あのあと、廃工場での事件で、私は彼を殺そうか迷ってしまったけれど、今はこうして婚約者になっている。
でも、好きになったのは、何故?
確かに私は、あのとき彼に心を開いた。
けれど、それと好きになるのとは、違うような気がする――なんとなく。
心を開くのは、その一瞬だけでいい。
寧ろ、そこから彼のいろいろな面を受けとめて好きになっていくのではないだろうか。
だとしたら、好き、ということばに、理由は要らない。
ただ、開け放した心が彼で満たされていくこと――それが、“好き”になるということなのではないか。
“どうして好きになったの”
きっと、
好きになる、
なんて気の遠くなるようなことば。
眩しい未来まで、ずっとずっと続くことば。
まだ、始まったばかりなの。
――そう、違うことばで、こう言うでしょう?
それは――
「――…シャーネ?」
…、ぼんやりしていたみたい。
でも、今は、
『ごめんなさい。ちょっと出かけてきます』
手近なメモ用紙にそう走り書きして、私は駆け出した。
後ろで驚いているような気配が感じられたけれど、今は気にしていられない。
一刻も早くこのことばを彼に伝えたいの。
自然と速くなる歩き。
浮き立つような、ココロ。
(クレア、)
ああ、私は貴方を、
(愛してる)
それは、はじまりのことば。
end.
***
2つセットでも、単独でも。
クレアもシャーネも、相手を好きになって愛することが終着点ではないんだ、って考えてたらいいなあ、と。
あいこ.
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