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novel
YOU wearing the suit(クレシャ)


「シャーネじゃないか。どうしたんだ、こんなところで」


マンハッタンの街中で、シャーネは後ろから声を掛けられた。
声の主は、もちろん…



(クレア…)

「久しぶりだな。そして、今日も可愛いな!」

相変わらずの様子に、シャーネは顔をほんのりと染めた。


だが、相変わらずのはずなのだけれど、どこか違う、ような気がする。
彼で、間違いないはずなのだけれど。

ゆっくりと上から順に眺める。


紅い髪。


自信に溢れる力強い瞳。


きっちりとしたスーツ。




(…スーツ?)



「ああ、これか。いや、仕事の都合上、仕方なくってな…」

そう言って、恥ずかしいのを誤魔化すように襟元を少し緩める。
その所作の色っぽさに、シャーネは先程よりも頬の朱を深めて俯いた。


しかし、すぐにがばっと顔を上げると、クレアの胸元を掴み、ややはだけた襟元を直し始めた。


「シャーネ?」

その様子にクレアは目を見開いたが、シャーネは気にする様子もなく、必死にネクタイをいじっている。
やや時間はかかったが、それでもまたきっちりとした状態に復元された。
その出来栄えにほっとため息をついたシャーネは、そのままクレアを見上げ、触れるだけのキスをした。

クレアもそれに応え、はにかむように笑ってキスを返す。


「ありがとな、シャー…」

(クレア)

クレアの言葉を遮って、じっと見つめる。



(スーツ姿も、素敵)


(だから、)


(誰にも見せたくない…)


そう言うと、シャーネは鮮やかに微笑んだ。




顔を真っ赤にした紅髪の男が目の前の黒髪の彼女を抱き締めるのは、その次の瞬間。



end.


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