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短編小説
1:ある日ある時ふとすれ違う
 彼、高遠遥を学校では知らない者がいない。

全国模試では毎回上位に名を連ねるほどの秀才で、加えて品行方正。

性格は温厚で男女訳隔てなく優しく、しかも顔もいいとくれば皆から人気ないほうがおかしい。

彼も例に漏れずそのタイプで、まさに絵に描いたような優等生っぷりだった。

しかし、そんな彼にも秘密はある。

「ったくマジあの先公ウゼェんだけど・・・やってらんねぇっつーの」

 目も悪くないのに”似合うから”という理由で掛けている銀フレームのメガネは学ランのポケットへと仕舞われ、代わりに胸ポケットから取り出されたのはタバコの箱。

慣れた手つきでその中から1本取り出すと、続いて取り出したライターで火をつける。

「・・・はぁ」

放課後の誰もいない屋上で紫煙をくゆらせるその姿は、完全に普段見せる優等生の姿からはかけ離れていた。

 これは誰も知らない彼の本当の姿。

優等生をしている方が色々と面倒がなくていいと、しかしストレスというものは溜まるもので、こうやって放課後屋上で一服するのが彼の日常だった。

「あ・・・」

「あ゛?」

 そんなある午後の昼下がり。

しかし今日はとんだ珍客がやってきてしまった。

いや、むしろこの場には遥よりも彼、三上翔太の方がずっと似合うのだけれども。

 翔太は遥のクラスメイトで、両極端にいるといっても過言ではない人物だった。

眼光は鋭く、いつも制服は着崩されており、何より生傷が耐えない。

無口で誰ともつるまない一匹狼の彼には暗い噂もあり、世間で言うところの”不良”に分類されている、授業に真面目に出ているのが不思議なくらいの生徒だった。

 そしてこの2人、友人でもなければクラスメイトというだけで殆ど会話を交わしたこともない関係だ。

これがフレンドリーな不良なら丸く治められるのだが、今回は相手が相手だった。

 さて、どうしようか・・・。

遥はよく回転する頭をフルに使い、この場をいかに乗り切るか思考を巡らす。

しかし、振り返ってみよう。

学ランの胸ポケットに入っているメガネはいいとして、指には吸いかけのタバコ。

しかもばっちり口から紫煙を吐き出したところを見られてしまっては、言い訳のしようもないというもので。

 とりあえず凄んだまま動こうとしない翔太の腹に一発。

「ぐぁ・・・はっ!!!」

「・・・悪いな」

あわよくば、目が覚めたとき自分が見たことを忘れてしまっていることを願って・・・。

 腹を抱えて地面に沈む翔太に、遥はそっと両手を合わせた。

このときの俺に会ってしまったことが悪いと思え。

意外と気の短い彼であった。

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あきゅろす。
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