短編小説
ブラコン!
※優市(大学4年・21歳)×零時(小学6年・11歳)
小学校6年になって、司が塾に行くようになってからは、毎日のように4人で遊ぶことは少なくなったが、それでも彼の塾のない日は決まっていつも一緒に遊んでばかりいた。
今日も学校が終わり、そのまま校庭で遊んでいたところだ。
しかし気付けば、すっかり日は落ち、遊具で遊ぶ4人の影は長く伸びている。
校庭には彼ら4人の姿しかなく、職員室のある校舎の1階だけに明かりがともっていた。
「そろそろ帰ろっかぁ」
誰が言ったのか、それに他の3人が頷き、でも帰るのが名残惜しいとばかりに、今日の授業の話や友達の話、次は何して遊ぶだとかどうでもいいことを喋りながら、傍らに置いた自分たちの、少し小さく感じるランドセルを手に取り、のろのろと帰り支度を始める。
そんな時だった。
校門の辺りから猛スピードで駆けてくる人影が見えて、思わず彼らはぽかんと口を開け、動きを止めてしまう。
「レイ〜〜〜〜〜〜っ!!」
その背の高い人影は、手をぶんぶん振りながら4人の中の1人の名前を呼んでいる。
聞き覚えのありすぎるその声、その台詞は、彼らの良く見知った人物のもので、”レイ”と呼ばれた少年の兄である優市のものだった。
そう、近所でも有名な物凄く弟思いのお兄さんの。
彼は家からそれなりに距離のある小学校まで全力疾走してきたにもかかわらず、息一つ、髪一つ乱れぬ、喋らなければステキなお兄ちゃんの姿だった。
「レイーっ!お兄ちゃん心配したんだぞ。日が暮れても帰ってこないから、美少年好きの変態オヤジだとか、変態教師に拉致監禁されてって、ちょっとレイには難しいかなぁ?そう、誘拐されてそのまま嫌がるお前を縛り付けて、まだ俺だってしてないあんなことやこんなことをされてないかって気が気なくてな、思わず飛んできちゃったよ」
口を開けば、ただの変態ブラコン兄貴。
途中、小学生には理解できない危ない台詞を吐いた彼は、そこまでを一息で言い切って、ランドセルを背負おうとしたまま固まっている零時を、力強く抱きしめて、頬ずりをする。
「ユウちゃ・・・っ!痛いよ!もうっ」
半分以上は意味の分からない内容だったが、それでも兄にここまで心配されて、彼も満更でもないらしい。
頬を手で突っぱねながらも、顔は嬉しそうに笑っている。
そのまま腕に抱き上げられても素直なもので、頬を突っぱねることをやめ、首に手を回して、すっかり懐いてしまっていた。
こんな光景は、この兄弟とそれこそ生まれたときから知り合いの3人にとっては、日常茶飯事のことだ。
しかしそれでも、呆れた顔、少し羨ましそうな顔、複雑そうな顔。三者三様の表情を浮かべている。
「レイちゃんちの兄ちゃんって変わってるよなぁ」
「そうなの?オレにも兄ちゃんいたらあんな感じかな!?なあ、司!」
「うーん、確かにユウ兄ちゃんはかっこいいけど・・・」
あ、と3人の声がハモリ、途端ほっぺが真っ赤に染まっていく。
「・・・・さ、さすがに兄弟でキ・・・ス・・・はしないんじゃ?」
「「「・・・うーん」」」
たかが迎えに来たくらいで、映画俳優もビックリなキスをしかけた優市に、3人は顔を赤くしながら首を傾げるのだった。
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