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短編小説
めばえ ※微
※優市(大学2年・20歳)×零時(小学5年・10歳)
!ショタ注意!


「ユウちゃん。どうしたの?今日はパパみたい」

 1月15日。

朝からダークグレイのスーツに身を包んだ10歳年上の兄を見上げ、零時は不思議そうに首を傾げた。

確か、何年か前の春頃にも、同じようなことを聞いていたような気がするが、あの時は大学の入学式で、零時も一緒についていったので覚えている。

 でも、今日は入学式だなんて聞いていない。

父親は毎朝スーツを着て会社に出かけるが、兄の優市が出かけるときにスーツを着ていたのは入学式以来だった。

 腰にしがみつく様にして、スーツ姿の兄を見上げると、何だか別人のような気がしてドキドキする。

「今日は成人式って言って、20歳のお祝いをする日なんだ」

 ひょい、と抱き上げられ、同じくらいの視線になると、少し髪型も違うような気がした。

「せいじんしき?皆でお誕生日会するの?」

「うーん、ちょっと違うけど、まあそんな感じかな?20歳になった人皆で祝うんだ」

 首に腕を回して、頬を摺り寄せるようにして零時は甘える。

彼はこの格好いい兄が大好きだった。

何でも一緒にしたがったし、学校に行っている時間以外はずっと一緒だった。

 四年前に母親が事故で亡くなってから、必然的にしっかりしなくてはならなくなった零時だが、それでもこの弟に甘い兄には甘えてばかりいた。

「ねえ、レイも一緒に行っていい?ユウちゃんのお祝いしたい」

 零時の言うことなら大抵、何でも聞いてくれる優市だが、今回はそうでもないらしい。

「うーん・・・。連れて行って自慢したいのは山々なんだけど。人がいっぱいいて、レイが知らない奴に連れて行かれちゃったら困るからなぁ」

「ユウちゃんと手、繋いでるから大丈夫だよっ!」

 渋るような声を出す兄に、意地悪だ。とぷぅっと膨れて見せるが、彼は困った顔のままで、空いた手で頬を掻いている。

「でも、レイは可愛いからお兄ちゃん心配だなぁ・・・」

 どうしよっか、とこのままでは本当に連れて行ってしまいそうな長男に、横からほわわぁぁんとした声が掛かった。

「ユウちゃん。流石に成人式までレイちゃんを連れて行くのはやめないさいね。それにほら、ユウちゃんは新成人代表の挨拶があるから、ずっとレイちゃんのこと見ていられないでしょ?」

 そこで、思い出したように頷く優市は、途端、目をウルウルとさせて、腕の中の零時を抱きしめた。

「レイ、ごめんな。お兄ちゃんやっぱりレイのこと連れて行けない!こんな可愛いレイを1人にさせておくなんて・・・っ!」

 何もそこまで、と思うが、彼にとってコレは由々しき事態らしい。

「レイちゃんはお家でパパとカズくんと一緒に、ユウちゃんの帰りを待ってようね」

 ソファに座って、新聞を広げる父親は、隣でゲームをしている三男の和己の頭をポンポンと撫で、再び視線をテレビ欄へと戻した。

「うん、分かった!おうち帰ってきたらお祝いしようね。ユウちゃん」

 その言葉に優市は出し決める力を強くすると、零時の顔中にキスを落としていく。

「お兄ちゃん、式が終わったら直ぐに帰ってくるからな!!それまで寂しくても1人で泣いちゃダメだぞ?」

 最後にちゅっと唇にキスをして、額を人差し指で軽く突いた。

「ユウちゃんもしんせーじん代表頑張ってね」

 ハイ、いってらっしゃいのチュウと、唇にキスのお返しをされて、優市はスキップをしながら出発した。

 玄関でお見送りをして、優市の姿が見えなくなった頃、少し後ろに立っていた和己に抱きつかれて、零時は驚いたように振り返った。

「カズ!?」

「レイ兄ぃ、オレにもちゅーってしてっ。ユウ兄ばっかりずるいよ!」

 眉根を寄せて、上目で見上げてくる弟は可愛くて、よしよしと頭を撫でてやる。

「うん、じゃあちゅーっ」

「ちゅーっ

と、少し唇を尖らせる和己に、ちゅっと唇を触れさせると、にっこりと笑ってみせた。



 父親の膝の上で眠っていたはずなのに、目が覚めると蕩ける様な笑みで優市が自分の顔を覗き込んでいて、驚いた零時は瞼を擦った後、パチパチと瞬きをした。

「・・・あ・・・れ?ユウちゃん?」

「ただいま」

 そう言って、軽く唇にキスをされて、徐々に目が覚めていく。

「ぅん・・・。おかえり。パパは?」

 いつ帰って来たのだろうか。

きちんと玄関でお出迎えがしたかったのに。

 家を出る前と同じ、スーツ姿の優市はやっぱり格好良かった。

「ああ、父さんならカズと一緒にケーキ買いに行ってるよ。成人式のお祝いだって」

「そっかぁ。レイ、白くて苺が乗ったのがいいなぁ。ユウちゃん好きでしょ?」

「レイはお兄ちゃんの好きなものよく知ってるなぁ」

 いい子いい子と撫でられて、嬉しくなってくる。

「うん!レイ、ユウちゃんのこと好きだからなんでも知ってるよ!」

「レイ・・・っ」

 胸を張って、自慢げに言う弟に、優市は感極まったように抱きしめて、キスをして、頬ずりを繰り返す。

そのたびに、柔らかい髪が頬を撫でて、零時はくすぐったさに体を捩った。

「ユウちゃん、くすぐったいよ」

「うん」

 しかし、優市はそれをやめようとしない。

それどころか、ちゃんと声が聞こえているかも妖しいほどだ。

「ユウちゃん?」

 少しおかしいと、首を傾げると、その首筋にもキスをされる。

「んっ、ユウちゃんっ。どうしたの?」

 本能的に危険を感じて、腕の中で身じろぐ。

しかし、10歳も年上の兄との力の差は歴然で、びくともしない。

「ユウちゃん!なんか怖・・・んっ!」

 半泣きになりながら、優市に訴えると、顔が近付いてきて、先ほどの”ただいまのちゅう”とは違う、まるで食べられてしまいそうなキスをされる。

「うん・・・、んっ!」

 開いた口の隙間から舌が忍び込み、小さな零時の舌に絡みつく。

それを味わうように吸れて、頬が火事になったみたいに熱くなって行くのが分かった。

 唇の端からは、どちらともつかない唾液が流れ、顎を伝って首筋に落ちた。

 頭がくらくらする。

いつもの唇と唇をくっつけるだけのキスの何十倍も、何百倍もドキドキして、心臓がうるさい。

「あ・・・、ぅんっ」

 そっと、優市の手が零時のハーフパンツの中心に触れて、布越しにソコを掴まれる。

「んんっ!!」

 ビクビクッと、電気が体に走ったような気がして、零時は驚いて優市の体を押し返すと、それは以外にもあっさりと離れていった。

「お兄ちゃんも、レイのこと大好きだよ、愛してる」

 そう言って、今まで以上に綺麗に笑う彼に、なぜかドキドキしてしまって、零時は頷くことしかできなかった。



 今考えれば、それからスキンシップがさらに激しくなったような気がしてならない。

自分のセリフが、兄を暴走させる引き金になったのかと、今更ながらに思い出して落ち込む零時だが、それは優市にとってはほんのきっかけにしかすぎなかったのだった。

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