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短編小説
2.牧原家の朝-次男と三男-
 長男の部屋を出て、すぐ向かいのドアのノブへと手を掛ける。

この部屋の主は三男の和己だ。

ちなみに長男の隣が零時の部屋であり、この2人を起こすのが彼の朝の日課となっていた。

 しかし、今日はどうやら勝手が違ったらしい。

ノブを回そうとしたところで、それがいきなり内側に引かれ、思わず後ずさると、戸口には彼よりも少し背の高い弟が立っていた。

「あ、おはよう。カズ」

 悔しながらも、少し目線を上げる形で告げると、彼は猫の様な目を眠たそうに細めたまま、零時へと視線を移す。

こんな様子では、ちゃんと姿が見えているかどうかも微妙だ。

 いつもはキレイにワックスでセットしてある髪は、寝癖のせいで一房、ぴょんと跳ねており、眠たそうな顔に相まって、少し可愛いと思ってしまう。

自然とそれに手が伸びてしまい、試しに少し引っ張ってみた。

「んん!?」

 すると、見る見るうちに少し眦の上がった意志の強そうな目が開かれ、少し驚いた様子で瞬きを繰り返している。

しばらくしてやっと焦点の合った目で、一つ上の兄の姿を確認すると、ほっとしたように微笑った。

スポーツ少年らしい、爽やかな笑顔だ。

「あ、レイ兄おはよ」

「おはよ。なんだ、今日は1人で起きれたじゃないか」

 その笑顔に釣られる様に、えらいえらいと思わず寝癖を撫で付けた手で頭を撫でてやる。

 10も上の兄がいるせいか、零時はこの1つ下の弟のことをまるで、小さい子でも扱うかのように可愛がっているのだ。

 それが和己にとっては嬉しいような恥ずかしいような、むかつくような・・・。

1つしか年の変わらない、しかも自分より背の低い(2cmでも)兄にそうされるのはいささか不服らしい。

だから少し不機嫌な顔をして手を払うと、くるりと背を向け部屋の中へと戻ってしまう。

 そんな彼の態度に零時はやれやれと呆れながら、でもこんな拗ねたような態度を取って見せても、この弟が本当はそれほどい嫌がっていないことをよく心得ていたので、ニコニコと笑って、「着替えって顔洗ったら降りてこいよ〜」と、開いたままのドアにそう声を掛けるのだった。

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