短編小説
1-12
白目こそもう剥いていなかったが、覗き込んだ忍は恍惚とした状態のまますっかり夢の中の住人だったのだ。
「・・・ふーん。そんなに気持ちよかったのか。・・・アレで気持ちよく飛ばすなんて・・・とんだ好きものだね」
突っ込まれただけで意識を飛ばしていたとは知らない勇は顔を引き攣らせながらそう言うが、忍としてはとんだ言いがかりである。
しかし、その忍といえば未だ意識を飛ばしたままなのだから、文句も言えないが。
「一世一代の告白が・・・忍さんの馬鹿!ああっ、でもやっぱり好きだ!」
きぃいいっと悔しそうに、でもやっぱり幸せそうにそう嘆く勇としたら人生で初めての自分からの告白だったと言うのに、まさか聞いてなかったなんて!とショックに思うのは最もかも知れない。
しかし。
「そっちがそのつもりなら・・・忍さんから俺のことを好きだって言わせてみせようじゃないか。ふふふ、俺に恥をかかせた罰だよ」
その企みは如何なものか。
全てのタイミングが上手く噛み合ないまま、しかし彼らは出会ってしまった。
セックスの経験値は高くても、恋愛経験値は低い勇と。
セックスどころか恋愛経験値さえ0の忍と。
古びたアパートで今、ひっそりと1つの恋が始まりを告げた。
◇
「・・・・・・それより、まずはコイツをどうにかしなくっちゃな」
そう小さく呟いた勇の視線の先には、今だ萎えることなく忍の後孔に刺さったままの自身の雄。
・・・前途は多難なようだ。
to be continued...
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