短編小説
1-11 ※微
「はぁっ・・・は、すご・・・っ、ん」
まるで最後の一滴まで絞りとるように蠢く中に、今だ射精しながら腰を打ち付ける。
2回目はもう少し余裕を持って、そう思い徐に忍の雄に手を伸ばすが、それは確かに勃起しているというのに全くといっていいほど相手の反応がなかった。
先ほど、触れるだけであんなにも声を上げていたというのに、だ。
「忍さ・・・」
もしかして嫌われてしまっただろうか、と自分でも先ほどの行為はあんまりだったという自覚がある勇はそう自嘲気味に笑って、そっと忍のその日に焼けて少し傷んで茶色くなってしまっている短い髪に恐る恐る触れる。
来るもの拒まずで、ゲイという性癖を持っているにも関わらず相手に困ったことなどなく、こんな触れるだけで緊張したことなど今日が初めてだった。
騒音の苦情を言って、それでそれなりに気の合いそうな人なら近所付き合いでもしようか。だなんて考えていたのに、開けたドアの向こうには自分好みの彼がいて。
同じ性癖ならば構わないだろうと、少しちょっかいを出して・・・止まらなくなった。
「・・・忍さん、好きだよ」
名前を呼んで、それから自然と出てきた続きの言葉に勇は納得していた。
出会ってまだ1時間と経っていないというのに、自分はこの人に恋をしてしまったのだ、と。
「好きだよ、信じてもらえないかもしれないけど・・・俺はあなたを好きなってしまったみたいなんだ」
聞いたことのないような甘い声が出て、自分自身にくすぐったくなってしまう。
願わくば、あなたにもこの気持ちを受け取ってもらいたい。
「ねぇ、忍さん・・・ん、んん????」
そう思い、だらしくなく緩む顔を自覚しながら忍を覗き込み、勇は自分の目を疑った。
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