短編小説
1-6 ※
「ふぅん。見られてるだけで感じるんだ。・・・ああ、ほら今後ろがぎゅって締まったよ。ここ、どんな風になってるか聞きたい?」
だがやはりおかしいのは不法侵入者である勇の方だ。
まるで恋人を口説くかの様な甘い声でうっとりそう呟くと、にっこり蕩けるような笑みを1つ。
「あっ!あ゛っ、ああーっ!―――――――――っ!!!!」
それに見蕩れた忍の隙を狙い、手を伸ばしたのは筋肉に覆われた尻の狭間から顔を出しているカラフルな棒。
それはバイブ機能もなければ大した太さも長さもない。カラフルなだけが取り柄の張型だったのだが、勇は何を思ったかそれをいきなり激しく動かし始めたのだ。
「ひぃいっ・・・!やめ・・・やめろっ!あ゛あ゛あ゛―――っ」
忍としてはたまったもんじゃない。
日課となっているオナニーの最中に突然現れた顔とスタイルどころか声まで極上の、しかし全く素性のしらない男の存在だけでもビックリなのに、そんな極上の男に尻の穴を見られながら道具でとはいえ弄られているのだ。
自分がゲイだと気付き、しかも自分が男に突っ込まれたい側だと自覚して10年。
彼氏どころかその男らしい容姿から突っ込む側だと勘違いされ、一夜の相手すらいたことがなかった忍としてはこの事態は喜ばしい反面どう対応していいのか分からない。
だというのにオナニーで慣れた体だけは勝手に反応していて、初めて他人から与えられる快感に全身が悦んでいた。
「ほら、聞こえる?ぐちゃぐちゃに濡れてるよ、忍さんのここ」
それはそこを弄っている勇にも一目瞭然で、恥ずかしい言葉に忍のつなぎから見える日焼けしていない肌が一層赤く染まる。
「んっ、んんっ・・・や、やめてくれ・・・これ以上・・・は、ぁああっ!」
恥ずかしくて、でも他人から与えられる快感は今まで感じたことがないくらい悦くって、口では「止めろ」と言いながら心の中では「止めないでくれ」と叫んでいた。
「ここはこんなにも気持ちいいって言ってるのに・・・ああ。もしかして誰かに操立ててるとか?そういえば俺がここに来たのも毎日毎日最中の声が煩くて文句言いに来たんだったな・・・チッ」
それが相手にも通じたのか張り型を動かす手は止まらず、しかし嫌なことを思い出したとばかりに忌々しそう言った勇の台詞に忍はさぁっと血の気が引いていくのが分かる。
隣近所がいないこのボロアパートの一室で誰に気兼ねすることもなく、毎晩飽きもせずにオナニーをしていたのは誰でもない自分だ。
そういえば勇がここに来たとき「隣に越してきた・・・」と言っていたではないか。いつ越してきたのかは知らないが、その日から今日までの間自分の喘ぎ声やらを聞かれていたと言うことだ。
穴があったら入りたいとはこのことだろう。実際、その穴といえばこの目の前の突然振って湧いた隣人の極上の男に弄られているのだが。
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