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短編小説
1-5 ※
 他人の家だというのに遠慮なくズカズカと押し入った勇は、壁近くに敷いてある布団の前で立ち止まった。

もちろんその上には呆気に取られたような顔をして、あられもない格好をした忍。

仁王立ちのまま自分を好奇の目で見下ろしてくる勇に、忍は一呼吸遅れて布団の上で退いた。

「…っ!」

しかしその分だけ距離を詰めてくる勇。

 整った顔に浮かべている笑みからはその考えを読み取ることはできず、忍はなんとも恥ずかしい格好でその射るような視線から逃げることしかできない。

後ろに下がれば下がるほどにじり寄られて、背中に壁が当たったところで忍はもうこれ以上後ろへと下がることが出来なくなってしまった。

 じゃあ横に逃げればいい。

しかし体をずらしたところで後ろに咥えた張型が中の1番感じるところを掠めて、忍は上がりそうになる嬌声を堪えるだけでいっぱいいっぱいになってしまう。

「っ・・・くぅ」

 肉厚な唇を噛み締め、太く凛々しい眉を顰める忍の顔は欲にまみれてとてもいやらしい。

そして勇は何を思ったかそんな忍の顔の横に両手をつくと、益々笑みを深くしてその張型を咥えた尻の穴や、こんな状況だというのに一向に萎える気配のない雄を見つめてくるのだ。

その手に、視線に完全に逃げ道を失ってしまった忍は至近距離にある綺麗な顔にドキリとしながら、同時に恐怖を感じていた。

 考えても見よう。

男の、しかも忍の様な厳つい体格でどちらかと言えば強面の、まさに男の中の男が尻の穴に男性器を模した張り型を咥え、嬉しそうに雄を勃起させながら女の様に喘いでいたのだ。

驚くのは当然のことで、気持ち悪がられるのももちろんのことだろう。写真の1枚でも撮られて、脅される方がまだ頷ける。

だというのに勇と言えば笑みを浮かべてその股間部を凝視しているのだから、物凄くおかしい。

何かあるのではないかとそう考えてしまうのが当たり前だろう。

しかしその視線に、こんな状態だというのに感じてしまう忍もまたおかしかった。

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