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平凡と俺様
無慈悲な兄と学校までの距離
 玄関先で再び泣き出してしまった弟達(もちろん俺もだ)に1つずつ拳骨をお見舞いしてくれた兄ちゃんは、やっぱり無慈悲な野郎だ。

しかし長年の習慣とは怖いもので、ぴたりと泣き止んだ俺は今度こそ大人しく白いローファーに足を突っ込んでやる。

はいはい、急いでるんだったよね。

 制服から鞄まで全身真っ白な俺は同じく真っ白な兄ちゃんの横に並ぶと、まるで結婚式だ。

まあ、2人とも男だけど。

その相変わらず表情に変化のない顔を見上げれば、あれ?なんだか珍しく呆れ顔。

 小さく息を吐いた兄ちゃんは首を傾げる俺の頭を一撫ですると、「いってきます」とよく通る声で三つ子たちに声を掛けた。

ああ、今日から新しい生活が始まる。



 電車を乗り継ぎ、バスに乗って山を越えて。

やっと辿り着いたときにはもうへとへとだった。

何あの人の多さ!

 ついこないだまで中学生だった俺には通勤通学ラッシュは思いの外ダメージが強くって、ふらふらと兄ちゃんの後をついて行くのでやっとだ。

入試のときに1回来ただけだから、今日はちゃんと全様を目に焼き付けとこうと思ったのに。

そんな余裕は全くない。

 兄ちゃんさ、こんなときくらい手を引いてくれるとか、負ぶってくれるとかしてくれてもいいもんじゃない?

しかしそんなことをされた日には大雨どころか嵐が来るのは目に見えていたので、されても困るんだけどさ。

とりあえず苦し紛れに広い背中を睨みつけて、べーっと舌を出してやった。

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