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平凡と俺様
はじめまして![1周年記念]
【Attention!!】
1周年記念!ということで日頃の感謝の印といってはなんですが記念小説を書かせて頂きました。
「月見里学園」の新名と「平凡と俺様」の双龍が出会っちゃいました!(笑)というお話です。
違う話の主人公が一緒に出るとかあり得ない!という方には大変申し訳ないですが・・・A=´、`=)ゞ
少しでも皆様に楽しんで頂ければ光栄です。
--------------

『はじめまして!』

@

 今日は月見里(ツキミサト)学園主催による近隣の同じく私立の男子校との交流会の視察日。

その近隣の男子校、白桜(ハクオウ)学園代表・・・生徒会長補佐の鈴木双龍(ソウリュウ)は中大路(ナカオオジ)家所有のリムジンで、30分ほどの快適な旅をしてきたところだ。

「おじさん、ありがとう!」

 挨拶と感謝の言葉は笑顔で大きな声で。

そう小さい頃から躾けられている双龍はリムジンのドアを開けてくれた運転手に元気よく声を掛けるが、どうやらそれが気に食わない者がいるらしい。

「オイ、双龍。俺に礼はなしかよ」

不機嫌そうな声で車内から双龍の腕を掴んだのは白桜学園生徒会長、中大路帝臣(ただおみ)だ。

「帝臣が運転したわけじゃないじゃん。それに元はと言えば帝臣がダブルブッキングするのが悪いんだろう?」

 相変わらずの不遜な態度に双龍はその手を振り払うと、「呆れた」とばかりの顔でそう切り返してみせる。

一見大人しそうな見た目をしているが、嫌なことは嫌と言える、どこか一本筋の通った性格が双龍のいいところだ。

逆に帝臣と言えばはっきりとした目鼻立ちでルックスだけは文句のつけどころがないくらいだが、俺様な性格で如何せん癖のある人物だった。

「チッ・・・。双龍、くれぐれも粗相のないようにな。相手は中大路家とも交流のある月見里グループの御曹司だ」

 こんな帝臣に張り合えるのはこの双龍とその兄くらいで、しかし。

「兄ちゃんみたいなこと言うなよな!」

「・・・アイツのことを引き合いに出すんじゃネェよ、胸くそ悪ぃ」

この2人、生徒会長と副会長という立場にも関わらず物凄く仲が悪かった。ちなみにその兄は現在学校で別件の職務を真っ当中だ。

「はいはい!じゃあ、もう俺行くからな!帝臣も家の仕事頑張れよ」

「ハン、誰に言ってやがる。俺を誰だと・・・ってオイ!」

「んじゃ終わったら連絡するから!おじさん、また帰りもよろしくお願いします!」

「いってらっしゃいませ」

 笑顔で手を振りながら門を潜っていく双龍に運転手は頭を下げると、素直じゃない主人に小さく笑ってみせる。

「・・・何だ」

「いえ、双龍様は素直でとてもまっすぐな方だと思いまして」

「フン、アイツはそれくらいしか取り柄がないからな」

という帝臣の顔は何だか嬉しそうにも見えた。

A

「いやぁ、白桜に入った時もビックリしたけど、ここも凄いなぁ・・・流石お坊ちゃま校」

 正面にはバカでかい、城にも見える5階建ての白亜の校舎。

観音開きの門からそこへと続く無駄に広い道は石畳で、真ん中には某遊園地顔負けの噴水が。

「これは写メ撮って太一達に送ってやらないと!!!」

それにキラキラと目を輝かせた双龍はポケットから白い携帯を取り出すと、噴水をバックにカメラのレンズを自分の方に向けて記念に1枚。

まるで観光にでも来たようなはしゃぎっぷりだ。

「はぁあ・・・それにしても静かだなぁ」

 しかし先ほどから他校の生徒が騒いでるというのに、人っ子一人いない。

最近は物騒だから部外者が入ったら警備員の1人でも出てきてもおかしくないだろうに。

「もしかしたら帝臣が何か言ってくれてんのかな?門も開いてたし」

まあでも、ここはポジティブシンキングの双龍のことだ。

そう結論付けると、噴水の周りに沿って校舎へ向かって歩き出した・・・が。

「オイ、お前」

 突然背後から低い声がしたと思えば、ガシッと掴まれる肩。

「え!?」

ビックリして振り返ったそこには双龍とは正反対。全身を真っ黒の制服に身を包んだ長身の少し目付きの悪い、しかし恐ろしく顔の整った男が立っていた。

 身長は5cm以上・・・もしかしたら10cmくらい差があるかもしれない。

腰の位置も高く、スラリとしなやかな体型はまるでモデルのよう。

肩を掴む手は大きく、指の一本一本が長くて男らしく骨張ったものだ。

爪の先まで手入れが行き届いているのか、綺麗に切りそろえられたその形もとても綺麗なものだった。

 その腕に沿って見上げたところにある顔は小さく、鼻筋がしっかりと通っていて濃い影が出来ている。大して高い鼻でもない双龍とは大違いだ。

きつめの目が訝しげに双龍を見つめているが、それすら気にならないほどで。

ただ、眉間に寄せられた皺と、横一文字に結ばれた口が勿体無かった。

B

「その制服、えーっと白桜学園のだよな?」

 ジーッと見つめる視線に困惑したように、先ほどよりは少し柔らかい口調で問いかけてきた内容にはっとする。

「そう!です!白桜学園1年、生徒会長補佐の鈴木双龍です!今日は交流会の視察で会長の代理として参りました!」

その通り!とばかりに勢い良くそう答えれば、相手は少し驚いたように目を見開いた後、笑った。

「・・・っ!」

 ゾクゾクゾクゾクッ!

瞬間、双龍の背筋を何とも形容しがたいものが走る。

それは悪寒ではなく、カァッと顔を中心に体が熱くなるようなもので、ずっと見ていたいほどにその笑顔は魅力的なものだった。

「月見里学園1年、交流会副代表の月見里新名(やまなしにいな)だ。伊ち・・・じゃない。代表は今日のこと忘れてたらしく、呑気に美容院だ。俺じゃあ少し頼りないかもしれないけどよろしくな」

「ちょ、今ゾクゾクしたんだけど!男前が笑うとやっぱ凄い迫力だ・・・」

「は?」

 その笑顔はすぐに引っ込んでしまって、双龍は残念に思ってしまう。

しかも相手は特に自覚がないらしく、同じ男前でも帝臣とは大違いだ!といつでも自信満々な俺様生徒会長を思い出し、その幻影を振り払うように小さく首を振ってみせた。

「あ、そういや1年?タメなんだ。てっきり年上かと思ったから緊張した〜!あ、こちらこそ代理だけどよろしくな!」

「ああ」

 何事も初対面が大事!とにこにこ笑顔でそう返せば、控えめながらに笑みが返されて胸がキュンと鳴る。

「なんか可愛い〜!えっと新名でいい?」

「え?あ、ああ・・・」

「じゃ、俺は双龍とかそーちゃんとか、龍くんとか適当に呼んで。で、視察って具体的に何すればいいのかな?」

コイツなんか好きだ、と思った双龍は機嫌良く、しかし少しマイペース気味に話を進めていくから新名としては困ったものだ。

C

 元来人付き合いが苦手な上に、双龍は天真爛漫というか表情がコロコロ変わって話題もコロコロ変わる。

急な展開に付いていけず、新名は困ったように眉を寄せてみせた。

「学校の写真とか必要だよな〜って眉間、皺寄ってる」

それに気付いた双龍が「もったいない」とばかりにぐりぐりとそれを指で解してやって、どう返して良いのやら。

「あ・・・う゛」

「ほらほら、せっかくの男前が台無しになるって。で、これからの予定とかなにかあるの?一応ここは月見里だし新名に任せたいんだけど・・・ってそういや帝臣が相手は月見里グループの御曹司とか言ってたな。それって美容院行ってる代表さんのこと?」

 また話題が変わって、新名は答えるだけで精一杯。

「え?あ、代表は俺の一応兄貴だ」

「兄貴ってことは新名も御曹司ってことじゃん!うひゃー!凄いな!あ、ていうか一応って・・・」

次から次への質問に、頭が回らない。

こんなときその“一応”兄貴の伊近(イチカ)がいてくれればどんなに良かったか・・・美容院なんて行ってんなよ。と文句の1つも言いたくなるものだ。

「・・・双子なんだよ」

「マジで!?つーことは新名みたいな男前がもう1人〜!?うわ、世の中って不公平だ」

 しかし文句を言いたいのは新名だけじゃないらしい。

別に自分の容姿に不満を持ったことのない双龍だったが、ここまで完璧な男前がこうもホイホイいるとなると話は別だ。

顔が良いことに越したことがない、と思うのは万人の考えだろう。

「いや、俺と伊近・・・あ、これ双子の片割れの名前。だけど、あんまり似てねぇ。俺と違って伊近は凄いカッコいい奴だから」

「えー新名よりカッコいいとか人間じゃないって!あーでも帝臣も顔だけは良いしな。探せばいるもんだ・・・」

あの俺様会長だって顔がいいから許されるのだ。いや、まあ普段は猫被ってるけどな。

と、結局は帝臣に戻ってきた自分の考えに、双龍は内心溜め息を1つ。

 同じ男前なら性格もパーフェクトな太一を引き合いに出したっていいものを、どうして毎回毎回出てくるのがあの俺様なのかいまいち納得がいかない。

思ったより自分の中の帝臣の存在の大きさになんだか腹が立つのだ。

D

「ただおみって?さっきから何回か言ってるけど・・・」

 その新名の言葉が引き金になったのか。

「ちょ、新名聞いてくれる!?帝臣ってのは今日来る筈だった生徒会長なんだけどさ。ほんっと俺様っていうか自己中っていうか我が道を行くっていうか!」

聞くとも言っていない新名を気にせず、機関銃の様に話し始める双龍も存外に我が道を行ってることには気付いてはいないようだ。

「でも普段はすんげー猫被ってるからか知らないけど。生徒だけじゃなく先生達からも信頼置かれててさ〜!その割に俺にはアレをしろだのコレをしろだの、俺はお前の召使いじゃないっつーのに!あ、しかも帝臣、中大路グループの・・・って知ってる?俺も知らないんだけどさ。それの御曹司とかで威張っちゃって。同じ御曹司の新名とは大違い。今日もその仕事の手伝いだとかで俺がピンチヒッターに来たんだけど。まあ・・・アイツ顔だけじゃなくてちゃんと頑張ってるの分かってるんだけど。口だけじゃないって分かってるんだけど・・・。と・に・か・く!あの上から目線の態度が気に食わない!!何度言っても直らないし、本当俺のことなんだと思ってるんだよなぁ?それだっていうのに毎回毎回アイツの言うこと聞いてやってる自分がムカつく!」

「え、あ・・・ちょ」

気付いたときには新名はあまりのマシンガントークに目を回していて、反応なんて返せる筈もなく。

「え・・・?わ!ゴメン!俺また突っ走っちゃったぁああ!」

ふらつく体を体を支えようとするが、相手は10cm近くも身長の高い相手。

双龍がしがみついているようにしか見えない。事実・・・。

「てめ!新名に何してやがる!」

この突然現れた第三者にももちろんそう見えたようだった。

 ベリッと勢い良く剥がされた双龍は無惨にもぽいっとその場に捨てられて、代わりに新名を支えたのはその男。

「オイ、新名!大丈夫か!?」

双龍よりも10cm近く高い新名並ぶほどの長身で、彼と同じくスラッとした体躯に長い手足。

小さな顔には全てのパーツがバランスよく配置されており、そのくっきり二重で長い睫毛に縁取られた目はふらつく新名を見て、不安そうに揺れている。

綺麗にカーブを描く眉は先ほどの新名同様寄せられていて、しかしそれさえも様になる程整った顔だ。

 新名や双龍の染められていない真黒な髪とは違い、綺麗にカラーリングされたオレンジがかった髪が彼の魅力をよりいっそう引き立てているように見える。

その染めている割に柔らかそうな髪が揺れて、振り返った顔はしかし・・・。

「ひぃ!」

思わず叫んでしまうほど、凶悪なことこの上なかった。

E

 美形が怒ると恐ろしいというのは本当らしい。

自分の兄が怒った時の顔を思い浮かべてみたが、あの兄は怒っているときは大抵笑顔だったので迫力だけ言えば目の前の彼の方が上だ。と双龍は思う。

恐怖心で言えば兄の方が上だったが。

「んだ、てめぇ・・・他校のヤツが何の用だ?ム・・・!どこからか新名の噂を聞きつけてきたんじゃないだろうな!?」

「伊近。コイツは白お・・・」

「イチカ!?って新名の双子のお兄さんの!?うわぁ、壮観だな・・・似てないって言ってたけどなんとなく似てる。こう、髪の毛を隠して・・・」

 眉を顰めたまま自分を怒鳴りつけてくる男に最初こそ首を竦めた双龍だったが、止めに入った新名の台詞に途端顔が輝く。

自分にも三つ子の弟がいるというのに双子というものが珍しいのか、それとも2人が美形の双子だったからかもしれないが。

少し離れたところから片手で顔の上の方を隠しながら2人を見ているらしい双龍のはしゃぎっぷりに、怒っていた筈の伊近も拍子抜けしてしまったようだ。

「新名。何、このちっこいの」

「ああ。お前がすっかり忘れてた白桜からの視察の代理、の双龍」

 “ちっこいの”と双龍が聞けば憤慨しそうな台詞だったが、180cmを越す伊近から見れば双龍は10cm以上も小さく、表情がコロコロ変わりちょこまかと動く様は小動物のようだったから仕方のないことだろう。

2人が小声で話しているのを他所に、双龍は相変わらず双子を観察しているようだ。

「そーりゅー?・・・ふーん、早速名前で呼んでんのかよ」

「ちょ、伊近?近ぇんだけど」

 それをいいことに伊近は顔を近付けて、新名の名前呼びを責めることにする。

きっと相手から請われたのだろうということはこれまでの経験上分かっていたが、気に食わないのは確かだったので。

「キスしてくれたら離れてやる」

「はぁ?・・・仕方ネェな」

双龍への牽制も兼ねてそう言えば、家族間でキスすることが当たり前だと思ってる新名は特に疑問に思うことなく軽く唇に触れてきた。

F

「ちょ、おおおおお!?」

 それにビックリしたのはもちろん双龍だ。

あ、口の形が似てるかも。と思った瞬間その目の前の双子がキスをしだすのだから驚かない方がおかしい。

「んだよ。なんか文句あっか?」

 真っ赤な顔して慌て始める双龍に伊近は楽しそうに顔を歪めると、その僅かに濡れたままの唇で近付いてくる。

「うぁああああ!ちょ、なんで近付いて・・・!」

「あ?てめぇが物欲しそうな顔してるからだろ?・・・俺達の見て興奮した?」

息が掛かりそうな距離で満面の笑みでそう尋ねられて、双龍の顔は増々真っ赤に染まっていった。

こんなに近くで美形に迫られれば相手が男だってこの反応は正常・・・なはずだ。

「・・・オイ、テメェ俺様のものに何してやがる」

 そんな時、この2人の間に割って入ったのは傍にいる新名ではなく第三者の声だった。

先ほどの伊近の登場シーンと既視感を感じる台詞にそちらを向けば、双龍と同じ白桜の白い学生服に身を包んだ長身の男が1人。

突然のことに新名は目を瞬かせ、その後ろに黒塗りのリムジンが止まっているのを発見する。

車が近付いたことさえ気付かなかった・・・と驚いていると、今度は双龍が驚いたように声を上げた。

「た、帝臣!?帰ったんじゃなかったの?」

 ただおみ・・・聞いたことのある名前だと新名は頭の中で復唱して、首を傾げる。

「お前、車に視察の資料忘れていっただろ。さっき気が付いて帰ってきてみれば・・・」

「え?わ、ありがとう〜!俺、忘れたことにも気付かな・・・」

「で、テメェ何様だ?ふざけた髪の色しやがって・・・俺のもんに手ぇだすとはいい度胸だな、あぁ?」

誰だったか、つい最近耳にした名前で・・・。

「あ?テメェこそ誰だよ。そもそもこのチビが俺の新名に手を出したのが・・・

「あ!ただおみ・・・って我が侭で、俺様生徒会長の」

新名!?お前、コイツのこと知ってんのか?」

そうだ!と漸く先ほど双龍が愚痴っていた相手だと言うことに思い至った新名は、「すっきりした」という顔で心持ち満足そうだ。

G

「アァ?お前、この俺が誰か分かって口聞いてんのか?」

 しかし、相手はその“俺様生徒会長”。

自分がこの世で1番偉いと思っている節のある帝臣だ。まあ、しかし誰でもそんな風に自分のことを評されれば怒らない筈がない。

 伊近に詰め寄っていた帝臣はステップを踏むように体の向きを変えると新名の胸ぐらを掴み、その勢いのままグッと顔を近付ける。

突然眼前に広がった自分の片割れとはまた別のタイプの美形に新名は目を瞬かせ、その意思の強い目がこちらを睨みつけているのに思わずその無表情に近い顔が引き攣った。

「・・・。フン。まあ、顔だけはいいのは認めてやる」

 そしてまた帝臣も、表情を変えたことで冷たい鋭利な印象を持つ顔から一転、酷く惹き付けられるような色を見せた新名に驚いていた。

しかしそれは一瞬のことで。

「だからってこの中大路帝臣様にんな口聞いて只で済むとは思ってねぇよな?」

すぐに不適な笑みを浮かべた帝臣に、実のところなんで自分が睨まれているのか理解してない新名は首を傾げることしか出来ない。

「いや、そのなかおおじただおみ様がどんなに偉いか知らねぇけど」

さらにはいつかの双龍と似たようなことを返してしまい、それがまさか帝臣の逆鱗に触れるとは思ってもいないのだ。

「あ―――――っ!」

 しかしそんな一方的な一触即発状態に水を差したのは、新名の片割れである伊近だった。

それにほっとしたのは新名だけで、目の前の帝臣の機嫌は目に見えて悪くなってきている。

「お前、中大路んとこの帝臣じゃん!」

この場に似つかわしくない明るい声でそう言う伊近だが、この男が“中大路帝臣”だというのはこの場にいる全員が理解していたわけで。

「・・・あぁ?誰だテメェ」

何を今更。と、新名の胸ぐらを掴んだまま再びその帝臣が伊近を睨みつけるのもごく自然な流れだろう。

「え?ああ。俺、月見里伊近だけど覚えてねぇ?」

 訝しげな帝臣の様子にただ1人伊近だけが納得していて、“いやぁ、あの時俺荒れてたからなぁ”とそのカラーリングされたばかりの少し長めの襟足を掻いている。

「月見里・・・伊近?・・・アイツは茶髪でもっとチビだろうが」

これくらいの。と、傍らにいた双龍よりもさらに低い場所で手を翳す帝臣に彼とさほど身長の変わらない伊近は苦笑してみせた。

 話を聞けばこうだ。

どうやら伊近と帝臣は数年前の中大路家主催のパーティで出会っていたらしく、その当時茶髪で160cmあるかないかのチビだった伊近と今の伊近が結びつかなったと言うことで。

「・・・世界中が自分の敵みてぇな目してやがったくせに。えらくヘラヘラしたもんだな」

「そう言うアンタだって、済ました顔したお坊ちゃんだっただろうが」

お互いの変わりっぷりに顔を見合わせて僅かに表情を崩した2人は、傍らで“訳が分からない”といった風にこちらを見つめる2人にもう一度顔を見合わせて笑った。

H

「結構イチカと気があってたみたいだけど。元々仲良かったの?」

「いや、何回かパーティで顔合わせたことあるくらいだ。そもそもあんな明るいヤツじゃなかったしな」

「ふーん。それにしては仲良さそうだったけど」

 結局実家の仕事をキャンセルした帝臣も加えて4人での交流会の視察は、最初が嘘の様に始終友好ムードのままで終わった。

これなら交流会もうまくいくだろうと、気分よく乗り込んだリムジンの中。

革張りのシートに身を預けながら尋ねた双龍に帝臣はそう答えると、にやりと人の悪い笑みを浮かべてみせる。

「なんだ、妬いたのか?」

「は?・・・ああ!そうだ、帝臣!お前、俺のこと“俺のもの”とか言いやがって!俺はものじゃないっていつも言ってんだろ!お前さぁ、頭いいくせに何回言ったら・・・・・」

それに双龍は“何言ってんだコイツ”という目を向けながら、唐突に思い出したようにそう怒り始めるから帝臣は呆れたように溜め息を1つ。

「そういう意味じゃねぇだろ・・・はぁ」

I

 一方、帝臣達を見送った月見里学園の2人。

「・・・なんとか無事に終わってよかった」

「今日は元々視察ってか見学だけだったんだから、んな気ぃ使わなくてもよかったんだぞ?」

新名は心労かぐったりしていて、片割れの伊近といえばそういうわけでもないらしい。

まあ、伊近は社交的だし、なんだかんだで度胸があるからな。とサラッと心の中で片割れを褒めた新名だが実際出たのは深い溜め息だった。

「新名は真面目だからなぁ。よし、今から寮まで俺がおぶっていってやる」

 そんな新名に何を思ったのか、伊近は目の前で跪き“よし、こい!”とばかりに背中を向けたではないか。

「どうせなら抱っこしてやりてーけど。また格好わりぃことになりそうだしな・・・」

なんて後ろを振り返りながら照れたように笑う伊近に新名は目を瞬かせると、しかし次の瞬間には破顔した。

「ありがとう。元気でた」

気持ちだけもらっとく。という新名に伊近も笑い返して。



「そういやあの2人、付き合ってるらしいぜ」

 という言葉に驚いたのは一体誰だったのか。

後日再開した4人の内、気まずそうに顔を引き攣らせたのが2人いたとか何とか。

fin

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* あとがき *

長らくお付き合い下さり、ありがとうございました!
ある種禁じ手というかなんというか・・・。
違うお話の主人公達を出会わせてしまった今回のお話でしたが、2カプの温度差が顕著になったものに。(笑)
月見里双子は相変わらずいちゃついてるし、俺様と平凡は帝臣さんが振り回されていたような。
攻めのタイプとしては類似点も結構有るとおもうんで仲が良さそうかな、なんて。受け子達は正反対なのでそれもそれでいいかな。みたいな。(何)
とにもかくにもここまで読んで下さり、ありがとうございました!
そして1年もサイトの運営ができてとても幸せです^^これからも皆さんが楽しんで頂ければあたしも嬉しいです!
ではではありがとうございました〜!

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