平凡と俺様
A
好意だけ貰っとくから!と心の中で呟いた俺は、親の敵でも見るような目で太一を睨みつけているエースを宥めようと口を開きかけたところで、教室内が異様に静かなことに首を傾げる。
あ・・・やっぱ俺達うるさ過ぎた?
入学式の日の教室なんて「友達になろうぜ!」的な騒がしさが普通だと思ってたんだけど、中高一貫のこの学校だと目新しくもないのかも。
もう少し大人しくしようと、太一に向かって今だ“宣戦布告”中らしいエースに声を掛けようとしたところで、それは第三者の声に遮られてしまった。
「HRの時間はとっくに始まっていますよ。・・・加藤君は速やかに席に着くように」
聞き覚えがない、でも落ち着いた大人の男の人の声だ。
そちらを振り向けば、兄ちゃんと似たタイプの・・・ライトグレーのスーツとノンフレームの眼鏡がよく似合う美丈夫さんと目が合う。
涼しげな目元と、薄い唇が冷たい印象を与えるけど、その反面。白い肌に紅茶色の髪、密色の瞳がその雰囲気を柔らかく、甘くしているみたいであのドSのお兄様と似てるのは“整った顔”と“知的”と“眼鏡”だけだ。
そう納得しながら俺がその人を観察していると、背後からガタガタっという音と「すいませんでした」というエースの声が聞こえて、はっと我に返る。
う、わっ!いくらなんでも俺見過ぎ!
誤摩化すように苦笑してみせれば、何故か微笑み返されてしまった。
うーん・・・でも、怒ってないみたいだしいっか。これだけ綺麗な顔してたら見られ慣れてるだろうし。
「君が外部受験で主席合格の鈴木双龍君ですね」
なーんて自己完結しようと思っていたんだけど、相手はそうじゃないみたい。名指しとか!
やっぱり怒ってる?
「は、はい・・・俺です」
恐る恐るといった感じで小さく手を挙げながらそう返答を返せば、何故だか満足そうな顔で頷かれて首を傾げる。
ていうか今更だけどこの美丈夫さん、誰なんだろ?
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