平凡と俺様
旅は道連れ世は情け
わーわーわー!と叫びながら耳を塞いでいた俺には兄ちゃんが何を言ったのかなんて全く聞こえなかったんだけど。
丁度タイミングよく(悪く?)、そんな兄ちゃんの話よりも気になるものを見つけてしまった。
どうせなら兄ちゃんと帝臣のただならぬ関係より、俺はあっちを物凄く優先させたい。
うん、これは一種の現実逃避だな。
未だ物凄い形相で俺に詰め寄っている兄ちゃんの後ろ、ちょうど肩越しに見える不審な人影。
現実逃避で幻覚が見えてるわけでもなければ、もちろん肩らへんに見えるからって霊の類じゃあない。
つーか俺、何の特技もないんだから霊感とかもあるわけないしね。
まあとりあえずその人影が俺たちと同じく全身白尽くめの、さらには真新しい制服の加減から多分新入生じゃないのかと推理することだけはできる。
それくらい誰でも推測できるっているのは置いておいて・・・。
とにかく!いくらここの生徒で同じ新入生ぽくっても、こそこそと辺りを伺っている様は見るからに怪しい!怪しいぞ!
何かから隠れるように折り曲げられた背は俺よりも兄ちゃんよりも背が高いようで、しかしその格好のせいで台無しにしてしまっている。
もったいないなーうらやましいなー、と思いつつ、そんな彼が講堂に入っていこうとしたところで俺は思わず声を掛けてしまっていた。
「あ、あの!」
そんな俺の呼びかけに振り向いたのはなにもその不審者だけではない。
俺の胸倉を掴み、至近距離で頭突きをかます寸前だったらしい兄ちゃんもそうだ。
少し顔の距離を置き、キランと無駄に眼鏡を光らせたかと思えば嬉々として話し始めた・・・ってか俺が聞いてなかっただけでずっと話してたんだろうけどさ。
「なんだ、やっと俺の話を聞く気になったか。・・・途中聞いていなかった罰としてそうだな・・・」
「って違!兄ちゃんじゃないって!」
今はそれよりもそこの不審者の方が大事だよ!
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