平凡と俺様
A
「王子って・・・俺のことかよ?」
本日2回目のお説教をしっかり聞き流してくれたらしい王子は、自分で言ったというのにそんなことを言っている。
「はぁ?王子が自分で言ったんじゃん。てんかのなかおうじグループのただおみ様だろ?」
何言ってんだ、とそう返してやれば王子は俺の顔を見つめた後、突然ブッと噴き出し、耐えきれなかったのか腹を抱えて笑い始めてしまった。
やっと解放されたのはよかったけど、でも人の顔見て笑うなんて失礼な奴だ。
言っとくけどな、俺はそんな面白みのある顔なんてしてないんだからな。
辛うじて目は二重だけど大きくも小さくもないし、鼻だって高くなければ凄い広がってるわけでもないし、口だって大きくもなく小さくもなく。
少なくとも顔を見ただけで笑われるなんてことは今まで生きてきた中で今日が初めてだよ!
怒る俺を他所に、奴はまだ笑いが収まらないのか涙まで流してやがる。
くそ、しかもその顔がやっぱり男前なことがムカつく・・・。
「はぁ・・・はっ、お前・・・それマジで言ってんの?」
とりあえず腹を抱えるほどではなくなったらしく、しかし未だ顔をにやつかせながらそう聞いてくる奴に俺はむっすりした顔を向けてやった。
「だからお前が・・・」
「マジかよ?お前、俺のこと知らねーの?」
「だから!知らないって・・・」
「だったらこれから覚えとくんだな。中大路帝臣。それが俺の名前だ」
相変わらず人の話を聞かない奴に、俺は発言するタイミングを完全に見失ってしまう。
そして、ご丁寧に空中に指で漢字を書いてくれた王子・・・もとい中大路はやっぱり俺の顔を見下ろして、にいっと口の端を上げて笑ったのだった。
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