[携帯モード] [URL送信]

平凡と俺様
A
 橋なんていらないほど狭い幅の川を飛び越えて、その桜を下から馬鹿みたいに大口を開けて見上げる。

兄ちゃんがいたら顎を下から叩かれて、無理矢理閉じさせられそうだけど。

三つ子達なら俺と同じように大口上げて、あの真っ黒な目をきらきら輝かせるんだろうな。

 その桜のデカさとあまりの美しさにもう少し見入っていたいのはやまやまなんだけど、この体勢では数分で首を痛めそうだ。

まあ、当分は桜も咲いているだろうし、他のところも探索して回りたいし。

 首をこきこきと回して頭を元の位置に戻せば、やっぱり目の前に広がるのは楽園もとい美しい庭園だ。

写メを撮って中学時代の友達に送ってやろうと携帯を取り出したところで、俺はその視界の端に映る真っ白な存在に気がついた。

 しかし真っ白と言えば自分も真っ白だ。

もしかして同じ新入生かも!?

なーんてただの白い花かもしれないじゃーん。

と現在1人ぽっちの俺は自分で自分につっこんで、でも淡い期待を抱きながら視線をそちらにやれば。

それはやっぱり俺と同じく真っ白な学ランに身を包んだ男子生徒で、だけどそいつの行動がいただけなかった。

 草木をぼんやりと眺めながら、ズボンに片手を突っ込んで歩いている奴の反対の手には煙草。

しかもそれはただ持ってるだけじゃなくって、先っぽからは煙が出てる。

そして次の瞬間そいつは煙草を口に銜えると、うまそうに煙を胸へと吸い込んだのだ。

 あーあー。煙草なんて吸っちゃって美味いもんかね。

うちの家族は誰も煙草を吸わないから分からないけど、中学時代から喫煙していた俺の友人は「吸うもんじゃない」と言っていた。

そいつは今では立派に禁煙している。って俺とタメなんだから当たり前だっつーの。

[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!