平凡と俺様
トンネルを抜ければそこは楽園でした
入学式が行われるという講堂への一本道の前で兄ちゃんと別れた俺だが、現在の時刻は8時半。
ちなみに入学式が始まるのは9時半・・・って1時間も暇じゃん。
「まだ誰もいないなー」
同じ新入生達と交流を深めるにしても、それらしい生徒は見当たらない。
というか人っ子一人いない。
生徒じゃなくても入学式の準備する教員とかがいてもいいもんだけどなあ。
「ま、1時間もあるし。散歩でもしよっと」
まあ、最低30分くらいしたら誰かしらやってくるだろうと気楽に考えた俺は講堂へは向かわず、反対側へと歩を進める。
俺には“学校案内”っていう強い味方もいることだし、それでも見ながら校内散策と洒落込もうじゃないか。
◇
「う、わぁ!・・・凄い」
トンネルを抜ければそこは雪国だった。・・・じゃないけど。
俺がトンネルを抜けて目にしたのは楽園だった。って感じだった。
講堂の反対側、一見高い木々に覆われていて何もなさそうなそこ。
よくよく見れば2人くらい通れそうな、木々がまるでトンネルになったのような抜け道があって。
“学校案内”によれば庭園と表記されているそこは色とりどりの花が咲き乱れ、まるで想像上の楽園のような姿をしていた。
小さな池や川まであって、その川にはまた小さな橋が架かっている。
真ん中には見たことのないくらい大きな桜の木が立っていて、穏やかな風に吹かれ、うすピンク色の花びらがひらひらと舞い踊っていた。
「凄い!凄い!凄い!」
これが興奮せずにいられるかっていうの!
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