私立月見里学園高等部
A
俺の肩を掴んでいる人は恐らく臙脂のネクタイの色からして上級生だろう。
ちなみに俺達は1年は紺色で、他の学年は色が違うようなのだが、どっちが臙脂でどっちが深緑か生憎俺は知らない。
相澤先輩は臙脂のネクタイだったが、勢いの良すぎる自己紹介だったので、2年だったか3年だったかすっかり忘れてしまったな。
って、別にこの際学年はどうでもいいだろう。
先ほどの那月先輩には劣るが、やたら綺麗な顔をした彼はどうやら怒っているようだし。
どうせなら厄介ごとは早く済ませてしまいたい。
「俺に何か用ですか?」
いきなり拳が飛んできそうなタイプではかったので、作り笑顔を浮かべ、努めて丁寧にそう切り出せば、相手は何が癇に障ったのか乱暴に俺の肩を突き放すと、人一人殺せそうな視線で睨みつけてくる。
こ、怖ぇ・・・。
やはり綺麗な人のの怒り顔は迫力があると、内心ビビッていると、目の前にずいっと人差し指を突きつけられた。
・・・人を指差しちゃいけませんって小さい頃に教わらなかったのかよ。
それにムッとするが、とりあえず相手の出方を待とうじゃないか。
「お前、アシュレー様に公衆の面前で抱きついた挙句、伊近君達とは慣れ慣れしくし、さらには蓮様にまで手を出すだなんて・・・!!!す、少しくらい顔がカッコいいからって調子に乗ってるんじゃないよっ。彼らを穢したこの罪は償っても償いきれない!万死に値することっ!!!・・・・覚悟しておくんだね!」
・・・って待たなければ良かった。
覚悟しろとか覚えてろとかつい最近も言われたよな。
ん?それに万死に値する?とかなんとか?俺何かこの人にしたんだろうか。記憶にない・・・。
大声で一方的に高らかに宣言した彼は、呆然とする俺を残して少しすっきりした様子でどこかへ立ち去ってしまう。
た、台風のような人だったな。
結局残された俺達がやっと動き出したのは、マイクによるアナウンスが入ってからだった。
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