私立月見里学園高等部
A
ポンポン、と励ますように隣にいた伊近の肩を叩いてやれば、訝しげな視線を送られてしまう。
というかその顔、ちょっと怖ぇぞ。
しかし、伊近はすぐに俺が何を考えているのか分かったようで、呆れたように溜息を吐いた後、ジト目で睨まれてしまった。
「はぁ・・・。新名はそのまま無表情で歩いてりゃいいから。うん、そうしろ」
何が気に食わないのやら。
俺はお前達の苦労を知って、激励してやったというのに。
まあ、でも言われなくても元々無表情に近いのでとりあえず頷いておいたが。
その間も悲鳴というか歓声は大きくなるばかりで、元気なことは好ましいが、無駄なエネルギーを使っているような気がしてならない。
全く、俺には理解できないな・・・。
人ごみを掻き分け(というか3人が通ると勝手に人ごみが割れた!)辿り着いた入り口前では人が列を連ねていて、どうやら受付を済まさなければならないらしい。
列は結構長く、先が辛うじて見える感じなのだが、その受付の机あたりが何やら騒がしいのには嫌な予感がする。
また生徒達が何やらきゃいきゃいと女子高生のように騒いでいるのだ。
・・・いくらそんなにデカくないといっても、両手を目の前で組んで浮かれている男子高校生はそんなに可愛くないぞ?
でも少し前にいる奴らは俺達とあまり体格は変わらないが、そっちのほうを見てうっとりしている。
うーん・・・まだ最初の奴らのほうがマシに見えるのは、感覚が麻痺してるのか?
若干引き気味で列を歩いていると、騒いでいる割りに受付けはスムーズらしく、もうすぐ俺達の順番だ。
目の悪いが裸眼の俺は、そこで漸く受付の騒ぎの原因が見えて、俺は思わず納得してしまった。
ああ・・・。
って分かってしまった俺は、何だかこの学校に早くも溶け込んだような気がして仕方がないのだが。
微妙に残念な気がするのはどうしてだろうか・・・。
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