私立月見里学園高等部
嵐の前の静けさ
入寮から早1週間、今日は待ちに待った入学式。
そんなにイベント事に興味のなさそうな俺が、なぜそんなにも入学式を楽しみにしてたかって?
それは今日も朝から大集合のこの3人のせいだ。
もちろんそれは双子の兄の伊近と、その同室の智希。あと俺の同室の黒崎を含めた3人のことなんだが。
正直あの日から何かにつけてあの3人に絡まれて、部屋の外に出るのもままならない毎日だった。
あの素晴らしい食堂にさえ行かせてもらえずに、部屋が近いはずのクラスメイトとも認識がない。
だからこそ、この入学式を機にやっと外に出れるというわけなのだが。
そんな俺とは裏腹に、制服に身を包んだ3人はやけに大人しい。
どこかの雑誌から飛び出してきたような種類は違えど、男の俺から見てもカッコいい3人組が静かに頭をつき合わせている姿は異様だ。
いや、何やらブツブツ呟いているからそこまで静かではないだろうが、それでも今までに比べればいくらかましだった。
まあ気持ち悪いのには変わりないが。
朝食は既に済ましてあったので、あとは入学式が行われる講堂に向かえば終わりなのだが、この3人はいつまで経っても動く気配がない。
本来なら俺1人でも行きたいところだが、生憎講堂までの道を知らなかったのでこの3人を待つよりほかないわけで。
入学式まではまだいくらか時間があったが、ここから講堂までどれくらいの時間が掛かるか分からないし、早く出るに越したことはないと思う。
「なあ、そろそろ・・・」
行かないかと伊近の肩を叩けば、それと同時に立ち上がられてビックリする。
「よし、新名。そろそろ行くぞ」
それに倣ったようにほかの2人も立ち上がって、なぜか気合満々の顔で座ったままの俺を見下ろしてくる。
さっきまで大人しかったのはなんだったんだ?
・・・気を集めてたとか?いや、まさかな。
ていうかそんなに気合を入れないといけない入学式って一体どんなだよ。
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