私立月見里学園高等部
A
続けて拳を握る伊近を慌てて止めると、やめろというように首を左右に振る。
それにこちらを向いた伊近は何故か泣きそうな顔をしていて、気が付いたら抱き締めていた。
「なんで、伊近がんな顔してんだよ」
「だって新名が…っ!俺の新名があんな奴に…っ」
そんな伊近の様子に心配してくれたのだということは分かるが、殴ることはないだろ。
別に俺は気にしていないし、伊近のことを止めた俺自身が先に一発蹴り入れてるんだから、さっきのでお釣がくるくらいだ。
それに、やっぱり”俺の”新名ってなんだよ…伊近。
小さく溜め息を吐くと、抱き締めたままの伊近の肩がびくっと跳ね上がる。
「新名っ!俺っ」
縋り付く伊近の体を少し離して、目を合わせると、寄った眉間の皺をほぐすように指で押してやった。
せっかくの男前が台無しだぞ?
「ほら、悪いことしたら言うことあるだろ?」
「でも、あれは!」
少し落ち着いたらしい伊近に、子供に言い聞かせるように諭せば、まだそんなことを言う。
だって、とかでもとか本当に子供だな…。
「別に俺は気にしてないし、伊近が怒ることじゃないだろ?」
「新名と俺は一心同体だ!!」
「…じゃあ俺も一緒に謝るから、な?」
「新名が謝る必要なんてないだろ。あのゲジゲシ黒崎が先に手ぇ出したんだ。…まあでも新名がキスしてくれるなら謝ってやってもいい」
って何様だよ…。
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