私立月見里学園高等部
一触即発
長く逞しい腕と、先程至近距離で嗅いだ香水の香りに自然と体が強張る。
こ、この腕は…。
「黒崎!」
俺が声を出す前に伊近がその名前を呼んだことで、なぜかこの部屋の空気が重々しくなってしまった。
な、なんだこの2人。
俺を挟んで睨み合うのは止めてくれないだろうか。
「てめ、月見里。なんでお前が俺様の部屋に勝手に上がってきてんだよ。しかも俺のオンナに手ぇ出すなんて、舐めてんのかテメェ」
「誰がお前の部屋に好き好んで入るかよ。それより、その汚い手で新名に触ってんじゃねえ!つか抱き締めんな!それは俺のだ!」
しかも伊近の台詞からして、どうやら原因は俺らしい。
俺は黒崎に抱きつかれる理由も、伊近のモノになった覚えもないんだが・・・。
どうしたものかと視線を巡らせれば、未だ呆けたままの智希が目に入る。
「おい、智希・・・っ!」
どうにかコイツらを止めてくれと、俺よりはこの2人と付き合いが長そうな智希を呼べば、はっとしたように俺の顔を見た後、しかしそれはすぐに大げさに逸らされてしまう。
さっきまでの調子はどうしたのかという、挙動不審振りに埒が明かないと感じた俺は、とりあえず今だ俺の腰を抱き締めている黒崎の鳩尾に肘鉄を食らわせてやったのだった。
すまん・・・本当は暴力で解決したくはなかったんだが、この場合は許してほしい。
手加減したからか、黒崎は少し腹を摩る程度で済んだが、その前に一発膝蹴りを入れているから痣が出来てるだろうな。
・・・まあ、それは自業自得かもしれないが。
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