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私立月見里学園高等部
A
 とりあえず伊近がいないことには話は始まらないし、続きは昼休みに。ということで解散したのだが、なんだか腑に落ちない。

黒崎もなんだかつまんなそうな顔をしていたが、他の皆は呆れたような脱力したようなそんな顔で、首を傾げれば小さい子でも見るような目で見られてしまった。

・・・意味分かんねぇ。

聞いたところで「自分で考えろ」と言われる始末で・・・俺は初めから「自分で考えて」いるのだが、堂々巡りで昨日から一向に答えは出ていない。

ヒントは「佐伯先輩」らしいが、全く見当がつかねぇ。

だってあの人、たまたまあそこにいて俺を助けてくれただけだろう?

しかし、それはあくまでも皆の推測であって、やっぱり俺は伊近から直接聞いた言葉じゃないと信じられない。・・・別に考えるのが嫌でそう言うことを言ってるわけじゃなく。

 いつもはどこか熱っぽい視線でこちらを見つめてくる隣の空でさえジト目を向けていて、目が合えば溜め息を吐かれる始末。

なんだよ、俺が悪いって?そんなに何も考えてないように見えるんだろうか。俺は必死で考えてるんだっていうのに。

 きっと眉間に何本も皺が寄っているであろう顔で何気なく時計を睨みつければ、時刻は1限の休み時間の最中。

見れば黒板には「自習」という字が書かれていて、そういえば隣近所の教室はわいわいと騒がしい。

「・・・そんなに都合良く自習が続くもんか?」

授業をという存在を忘れていたことを棚に上げてそう呟けば、それを聞きつけたらしい物知り顔の空に笑顔を向けられた。

「数学の先生なら体の調子が悪くなっちゃったみたい。こないだの現国の先生もだし〜・・・悪い風邪でも流行ってるのかな?」

 何か含みのある笑顔に寒いものを感じつつ、納得して頷けば空の笑みが深まったような気が・・・。

それに連動するように後ろの方でいくつも溜め息が聞こえたような気がしたが、振り返っても生温い笑みを向けられるだけで終わってしまった。

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あきゅろす。
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