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私立月見里学園高等部
B
 相変わらず加賀美のSHRは一言で終わってしまって、また教室内は朝特有の喧噪に包まれる。

「え〜!?イチくん、部屋にも帰ってないの〜!?」

「あ、空!声、デカイって!!」

「ご、ゴメンね・・・」

話題の中心といえばさっき途中で止まってしまった、伊近のことだった。

「・・・そういえば中等部の頃もこんなことあったよな?」

「あぁ…中等部に上がって、すぐくらいか?」

 智希の空を制する声に釣られるように場は一瞬沈黙し、しかしそんな中改めて切り出したのは渡辺だ。

それに他の奴らもそういえば・・・と騒ぎだして、いや、俺にも分かるように説明してくれないか?

俺は当時、颯爽と現れては助けてくれる伊近しか知らないんだ。

「…俺は中等部編入やからその頃からのいっちゃんしか知らんけど、当時そりゃもう荒れとって。寮から抜け出すのはほぼ毎日やし、授業はサボるわ・・・なんか周りと距離を取っとるって感じやったな。正直俺、同じクラスでも仲良くできへんなぁと思ったもんなぁ」

「うん・・・。初等部の頃はね僕達も仲良かったんだけど、それが中等部上がってイチくん凄くかっこよくなって、周りにそれまで以上に騒がれるようになってからかな?突然・・・。智くんが1番よく知ってると思うけど」

 説明を求めるより前に先に語られ始めた話に耳を傾けて、先を促すように智希に視線を向ける。

「ああ・・・うん。初等部まではまだよかったよ。今みたいに寮生活じゃなかったし、周りもガキだったから親の会社のこととかよく分かってなかったし、友達の顔の善し悪しなんていちいち気にしないだろ?でも、それが中等部に上がるとそーじゃなくなったわけ。微妙な年齢と、男子校っていう閉鎖された空間だからだと思うけど、月見里の跡取りであの容姿じゃそういう誘いとかされるようになってさ。最初は適当に遊んでたみたいだけど。でも、みんな伊近の家柄とか容姿しか見てないって・・・どいつもこいつもそんな奴ばっかりだって荒れて・・・俺も何も出来なかった。でも、さ。それが2年になった頃・・・突然アイツ楽しそうに笑うようになったんだ」

「え・・・?」

語られる伊近は俺の知らない伊近で、でも最後の智希の言葉にはっとしたように声を上げた。

「そ。そのとき新名に会ったんだって」

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