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私立月見里学園高等部
傷ついたのは
「あの野郎、携帯も切ってやがるみてぇで連絡もつかねぇ。理事長が調べたところ学校にも家にもいねぇって」

 補足するように続けられた黒崎の言葉に血の気が引いていくのが分かる。

伊近にされたことがショックで拒絶するような態度を取って、伊近を傷つけてしまったのだ。

傷ついたと思っていたのは俺だったが、それは俺だけじゃなかった。

 今思えばあの時の伊近は少しおかしかったような気もする。

どうしてあの時すぐに理由を聞かず、突き放すような態度を取ってしまったんだろうか。

自分だけが傷ついた気になって、伊近の気持ちを考えなかったのは俺だ。

分からなかったんじゃない、分かろうとしなかったんだ。

 握りしめすぎて白くなっていた拳に智希の手が重なり、今度は逆に頭を撫でられる。

「何で新名が自分のこと責めてんの?新名は何も悪くないんだから」

だから、泣かないでよ。という智希の言葉に俺は初めて涙を流していたことに気付いた。

ああ・・・、でもこれは。

「俺じゃなくて、伊近が悲しんでる」

「・・・新名」

「・・・ったく、あの野郎。何、新名のこと泣かしてんだよ・・・帰ってきたら只じゃおかねぇ」

 ゴシゴシと少し乱暴に俺の涙を拭ってくれた黒崎はそう呟くと、急に真面目な顔を向けてくる。

「新名、大丈夫なんだな?」

と聞いてくるのは、昨日優しい黒崎に縋り付いてしまったせいだ。

あの時は気付かずに逃げてしまったけど、ちゃんと向き合わないといけない。

大丈夫だという風に頷けば、何故だか少し寂しそうな笑顔でもう一度頬を拭われた。

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あきゅろす。
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