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私立月見里学園高等部
A
 結局ブレザーの前まで留めてもらってしまった・・・。

本当に至れり尽くせりで、普段はどちらかといえば俺の方が面倒を見ているような気もしないこともない同室者のこの対応はいかがなものか。

何故だか黒崎は自分が悪いと思っているようなのだが、全くといっていいほど彼に落ち度は見られない。

 親衛隊から逃げる俺を必死で探してくれたのは電話越しでも伝わっていたし、加賀美から助けてくれたのも、伊近から助けてくれたのも黒崎だ。

それと智希と。

そんな智希は俺と伊近の間に立って、心配そうな視線を向けてくれているのが分かる。

 2人には感謝してもしきれないが、それは伊近も同じだ。

探しにきてくれてありがとう、そう言いたいのは山々なのに今はどうしてもその一言が言えなかった。

こんなじれったくも感じるわけの分からない自分の感情に、しかし俺はやはりどうすることもできないのだ。

 眉間に皺を寄せ、小さく溜息を吐く。

今はもう親衛隊の奴らに囲まれてもいいから寮に帰って泥のように眠りたい。

しかし、だったらこのまま地面に膝をついているわけにもいかないだろう。

 とりあえず立ち上がろうと地面に手を突いたところに、目の前でさっと動く人の気配。

目の前に広がる黒い・・・多分人の背中だろう。それに少し視線を上げれば、首をこちらに向けている黒崎と目が合った。

「・・・黒崎?」

「ほら、乗れよ」

 何だ?と尋ねる前に背中を示されてしまい・・・、これは負ぶってやるっていうことだろうか。

だから俺は怪我人じゃねぇのに。そう思って腰を上げた瞬間、全くといっていいほど足に力が入らなかった。

・・・情けねぇ。

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