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私立月見里学園高等部
B
「…イチカ?」

 本当にあのイチカと同一人物なんだろうか?

だとしたら世間ってどれだけ狭いんだ…。

「そう。新名ってば全く気付かねぇし。コイツはすぐに気付いたのになぁ、ニイチ?」

 ニイチというのはさっきイチカが猫につけた名前で、俺と彼本人以外知っている人物はいない。

それに気付けば俺の膝から降りたらしいニイチは、伊近の足下に擦り寄っていて、彼の言葉が本当だということを物語っていた。

 いや、でもまだ信じられない。

イチカが伊近で、俺の兄弟だなんて。

「実は俺、新名のこと父さんから聞いて小さい頃から知ってたんだ。初めて会ったときは偶然だったんだけど、一目見て俺の双子の片割れだって気付いたんだぜ?」

 やっぱり双子だからかなぁと呟く彼に、俺は人生で一番表情筋と声帯を使ったかもしれない。

「双子!?」

いや、確かに年は同じくらいだと思ったが、双子にしては似てなさすぎる。

兄弟だとは分かる程には似ているかもしれないが、第一俺はあんなに男前じゃないぞ!?

「そうなんだよ。パパも新名ちゃん達がお腹にいるときに双子って知ってびっくりしたんだけど、でも一度に2つも幸せがやってきたんだよ?嬉しいじゃない」

 遠くを見るような目をする父さんは昔のことを思い出してるんだろう。

だが、俺が驚いてるのは双子ってことじゃなくて、双子というには伊近と似てないことなんだが…。

それに新名”ちゃん”はやめて欲しかったりする。


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