私立月見里学園高等部
A
ってあの彼の名前も”イチカ”だった。
さっき会ったばかりだから間違えるはずもなく、こんな身近に同じ名前の人が2人もいるなんて純粋に驚いてしまう。
でもあの”イチカ”の顔は知らないが、この目の前にいる”伊近”と同一人物ではないことは確かだ。
目の前の伊近からは何ていうのだろう、気品というか、どこか育ちのよさを感じることができる。
あんな喧嘩大好きですというオーラを出しているイチカとは違いすぎる。
そう一人で結論付ける間に、大分見つめてしまったらしい。
伊近は困ったように笑うが、それも様になっていて思わず感心してしまった。
「新名、んな見んなって」
と、笑いながら俺の名前を呼ぶ伊近にイチカか被る。
どこか優しい落ち着いたその声も似ている気がして、首を傾げた。
いや、でもそんなはずは…。
悩み始めた俺に、伊近は何を思ったか突然笑いだし、涙まで流している。
「え…?」
意味が分からなくて益々首を傾げるが、伊近は笑い上戸なのか中々治まらない。
ひぃひぃ言いながら笑い転げている様はなかなか滑稽だった。
「も…っ、新名最高!まだ気付いてねぇの?俺だよ、俺。イ・チ・カ」
そう言って笑って見せた伊近は、確かにさっき会ったばかりのイチカの笑い方にそっくりだった。
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