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私立月見里学園高等部
A
『ああ、君の声にうっかり聞き惚れてしまって用件を忘れるところだった。それほどまでにハニーは罪作りな男・・・。ほぅ・・・、そんな俺の可愛いスィートは今どこにいるのかな?』

 前置きの長い龍之介の話を半ば聞き流しながら、で、結局用件はなんなんだ・・・。

しかし律儀にその問いかけに答えてやる俺。

「寮の中庭が見える渡り廊下に入ったところだ」

『おお、やはり寮にくるだろうと踏んで先回りしていたのは間違いじゃなかったらしい。新名、そこから俺の姿が見えるかい?』

それに龍之介はまた嬉しそうにそう返して・・・ってコイツはどこにいるんだ。

そこから見えるかって・・・。

「あ・・・」

 あの、薔薇のアーチを潜ってこちらへと向かってきている目立つ金髪は紛れもなくこの電話の主、龍之介だ。

この学校指定の黒のブレザーを嫌みなくらいに着こなし、優雅にも見えるゆっくりとした歩みでこちらの方へと近付いてくる。

多分この学校でこの庭がこんなにも似合うのは龍之介くらいだろう。

ただ歩いているだけだというのにこんなにも様になるのは羨ましいを通り越して、呆気にとられてしまった。

『おや?もしかしてハニーは今柱の影にしゃがんでるのだろうか。ここからその可愛い姿が丸見えだよ?ああ・・・その体勢の君に下から見上げられたいっ』

 あちらからも俺の姿が見えたらしく、歩くスピードが少し速くなったような気がする。

いや、・・・もう後半にはこっちめがけて走り出したな。

しかし俺に見上げられて何が楽しいんだアイツは。

 ダダダダダダっと携帯片手に満面の笑みを浮かべながらこちらへと走ってくる龍之介は、汗が飛び散って?輝いて見える・・・謎だ。

しかし通話中の携帯のスピーカーからは「はぁ、はぁ」と走っているせいで息が上がったせいとはいえ、そんな息づかいが聞こえてきて正直気持ち悪い。

迷わず通話を切った俺は、廊下のすぐ近くまでやってきた龍之介に眉を顰めた。


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あきゅろす。
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