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私立月見里学園高等部
B
 俺に抱きついていた人、というか父親らしいが、彼は母さんに殴られると、しぶしぶといった風にやっと離れてくれた。

ずっと抱いたまんまのニイチは多分俺より苦しかっただろう、慌ててコートから出してやると、甘えるような声で小さく鳴く。

あぁっ!もう、ホント可愛いなー!

と、全く表情には出さないが、それに気付いた母さんが椅子に座るように勧めてくれて、そっとニイチの頭を撫でてやっていた。

よし、これでニイチも家族の一員だな。

 母さんの説明によると、15年前に離婚した父親と先月催された同窓会で久々に会って、どうやら和解したらしい。

離婚原因はよくは知らないが、彼らの雰囲気からしてどうでもいいことで別れたような気がする・・・。

それから1ヶ月で再婚というか復縁を決めたっていうのが何か母さんらしくて笑ってしまうが、まあどっちにしろいいことには違いない。

それに、赤の他人をいきなり父親と呼ぶというのは抵抗があるが、正真正銘自分の父親なのだ。

 15年間存在を知らされていなかったとはいえ、俺を見て目を細める顔は、鏡で見る自分の顔に似ているところもたくさんある。

母さん似だと思っていたが、どうやらどっちにも似ているようだ。

 しかし初めて出来た(というのは少し変だが)父親という存在が嬉しくて、すっかり彼の隣に座っていたもう一人の存在を忘れてしまっていた。
 
控えめな咳払いに初めて、彼の姿を目に映すと、にっこりととても綺麗な笑顔を向けられる。

どちらかと言えば父さん(何か照れるな)に似た彼は先ほど「親父!」と呼んでいたことから、十中八九俺の兄弟なのだろうけど、母さんから俺は兄弟がいたことなんて聞かされてはいない。

「あ、そっかあたしってば伊近のこと新名に話してなかったわね〜あはは」

 そんな俺の視線に気付いたらいい母さんは、少しバツの悪そうな顔で俺と彼の顔を見るが、最後は誤魔化す様に笑い飛ばされてしまった。

結局俺達の関係は何なんだ?

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あきゅろす。
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