私立月見里学園高等部
1:触る(ミツル×新名)
のんびりと過ごす昼休み。
初めてと言っては語弊があるが、学校内で初めてあった場所・・・裏庭に広がる森の中、ぽっかりそこだけが何もない小さな広場で過ごすのが最近の日課となっていた。
追われる俺を彼が匿ってくれた秘密の場所だ。
何を話すでもなく、草の上にじかに座って空に浮かぶ白い雲を見上げる。
あーあの形はニイチに似てるな、なんて考えて、今度は彼もここに連れて来てやろうと思った。
もちろんこの人が猫が嫌いでなければの話だが。
ふっと表情を緩め、そのままニイチに似た雲を見ていると不意に指先に何かが触れるのが分かる。
ああ、またか。
それは確かめずとも隣に座る彼の指だということは分かっていたので、気にせず雲を目で追い続けた。
そんな俺をどう思ったのか。
触れた指先は指の形を辿る様に上を這い、その1本1本が指に絡んでくる。
彼の細く、繊細な指は俺の指よりも長く、そしてひんやりと冷たい。
俺は手が温かいから調度いいな、なんて思って空を見上げていたら、指を絡められた手が持ち上げられて、その指先に柔らかい何かが触れた。
「佐伯・・・先輩?」
首を横に向ければ最近名前を知ったばかりの1つ上の先輩が、相変わらず前髪で殆ど隠れた顔でこちらをじーっと見ている。
そしてまた。
―――チュ
と、ほくろのある口元に手を持っていかれたかと思えば、どこかの国の王子がやるように甲に唇が押し当てられ、見つめられる。
・・・何がしたいのやら。
それにフイと視線を上へと戻すと、呆れたように呟いた。
「男の俺にキスしたって何も出ませんよ」
もう、このセリフも何回言ったことか分からない。
「・・・」
しかし彼からの返事は返ってこずもう一度視線を戻せば、今度はそこをペロッと赤い舌で舐められてしまった。
「・・・っ!」
うっかりそれを直視してしまった俺は何となくいたたまれず顔を反らすが、手はまだ離してくれそうにない。
「先輩・・・、手・・・離してください」
いつもは唇で軽く触れるだけで離してくれるのに、今日は何だっていうんだ。
「せんぱ・・・
「痛いだろ?」
・・・え?」
突然投げかけられた言葉の意味が分からず首を傾げれば、唇に手を寄せたままもう一度。
「今度は俺にももっと殴らせろよ」
そういって唇に弧を描いた彼は、知り合って日が浅いというのに何故だかほっとしてしまう笑顔で。
「・・・その前に男が男に襲われるってのも変な話ですけどね」
思わず俺も釣られて笑ってしまったのだった。
fin
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* あとがき *
ってかこれセクハラ!?
第5章以降の時間軸で、新名の中で仕事仲間のミツル=先輩の佐伯というのはまだ繋がっていない設定です。
そして付き合っても何でもないですが・・・ナチュラルにいちゃこいとる気が・・・。
本編ではミツルさんまだ第5章に出てきてないので・・・先走った感じで申し訳ないですが;
もう少し進んだところでコレを読み返していただければ「ふーん」って感じだと思います・・・うう本編も頑張ります。
つか1〜5まで全部ギャグにしようと思ってたのに、のっけから挫けました・・・。
でもどっちかというとこういうのの方が書くのは楽です。(笑)
お題配布元:あなぐら様より
「セクハラ5題」
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