私立月見里学園高等部
新名くんにお願い
あの後何故か「OK〜OK〜!」という樹さんの声を貰ってしまった俺達はその後予定通りGWいっぱいを撮影についやしたわけだが。
なんだか伊近の様子がおかしいのだ。
いや、前と変わらないと言ったら変わらないんだが・・・何というか鬱陶しいくらいにベタベタベタベタ・・・!
暑苦しくてたまんねー・・・。
それはGW明けの学校でも変わらず、廊下で人とすれ違うたび驚いたような顔やうっとり・・・え!?したような顔やら色々向けられてしまい、ほとほと困っているわけだが。
しかもその後ろには超不機嫌顔の黒崎に、珍しく無表情の智希が続いていて、むしろ背中に突き刺さる視線の方が痛いくらいだ。
黒崎は元々伊近のことが気に食わねぇみてぇだし、智希は智希で伊近にいつもの場所を取られて機嫌が悪いのだろう。
そんな伊近といえば俺の背中から腰に手を回した格好(歩き難いったらねぇぞ)で、前方から来る生徒達を威嚇してまわっているようで・・・。
どうやらあの撮影がきっかけで伊近のこの行動に繋がっているようなのだが、俺としては全く意味が分からねぇ。
「おい、伊近・・・お前いい加減に離・・・
「新名くんっ!」
・・・れ、ろ?」
学校でまでされるとは思っていなかった俺が最初に強く言わなかったのが悪いんだろうが、しかしそろそろ本気で鬱陶しい。
「離れろ」と、もう何回目・・・何十回目?になるか分からない言葉を告げようとしたんだが・・・。
突然後ろから名前を呼ばれ、それは不発に終わってしまった。
全く、誰だ?今回はもしかしたら大人しく離れてくれたかもしれねぇのに・・・。
やっぱり引き剥がすことが出来なかった伊近を背中に貼付けたままくるりと後ろを振り返れば、黒崎と智希に威嚇されている哀れな生徒達が約3名。
そいつらは全員が全員「男か?」と疑ってしまうほど小さくてなよっとした奴らばかりで、2人の姿にぷるぷると震えていた。
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