私立月見里学園高等部
E
とぼやきつつもどこか嬉しそうな顔をする母さんだが、その父さんと伊近までもが揃ってなにか言いたそうな表情をしている。
多分これは俺と同じ気持ちなんだろうな。
こんなことで気持ちが1つになるのは何か悲しいものがあるが・・・。
「それより母さん、話って・・・」
「ああ!そうよ、そのために早く帰ってきたのに!とりあえず私の部屋に行きましょう。お土産もたくさんあるのよ〜」
母さんが帰ってきたことで急いで帰ってきた理由を思い出した俺がそう切り出すと、母さんも母さんで急かした割には忘れていたらしい。
まあ話の内容は大体分かってるんだが・・・。
俺の腕を引っ張って歩き出した母さんに、伊近も反対側に付いてこようとするがどうしたものか。
いや、別に伊近に内緒にするような話ではないのだが、話したら話したで面倒なことになりそうだったので今まで黙っていたのだ。
少し下の位置にある母さんと顔を見合わせ、どうしたものかと首を傾げる。
「伊近。伊近は父さんと一緒に来てくれ。ゴールデンウィーク中に手伝ってほしいことがあるんだ」
「はぁ!?俺、親父と約束したよな?家のことは高校卒業するまでノータッチだっつって」
そこにタイミングよく訳を知っている父さんがそんな助け舟を出してくれるが、伊近も黙っちゃいなかった。
しかし猫の子を掴むみたいに首根っこを掴まれている伊近の姿は少し滑稽だな。
まあ、そんなこと口に出して言ったら拗ねるだろうが・・・。
「もう!仕方ないわね。伊近がここまで新名にべったりになるとは思いもしなかったわ!最初のうちだけで流石に毎日学校で顔つき合わせてたら少しはほとぼりが冷めると思ったのに・・・双子ってそんなものなのかしら?」
それでなくてもぶすっとした顔をした伊近に母さんは呆れたように声を上げると、父さんにそう問いかける。
「そうだね。今度母さんにでも聞いてみるかい?」
それにぱっと伊近から手を離した父さんは、そう切り返すとお手上げとばかりにもろ手を挙げて見せた。
ん?父さんが母さんて言うことは祖母さんだよな?
確か祖母さんにはお兄さんがいるって・・・どこで聞いたんだっけ?
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