私立月見里学園高等部
B
「いいからいいから」
「いや、よくないって…!」
「コラ、親父!いい加減にしろ」
父さんは大丈夫と言っているが、ニイチがこのデカい庭で迷子になったらどうするつもりだ!?
そんなことになったら俺は心配で夜も眠れねぇ…!
しかし父さんの力は意外に強く、伊近が腕を引っ張っているというのにずるずると半ば引き摺られる形で家の中に入れられてしまう。
「父さん!ニイチ、ニイチ探さねぇと!」
「全く、新名は家に帰ってきてもニイチ、ニイチって…確かにあの子はとびきり綺麗で可愛いのは分かるけど、少しは父さんのこと構ってくれても罰は当たらないと思うよ?」
「新名は親父のことなんて放っておけばいいからな。今はニイチを探してやんねぇと」
それに頷こうと後ろを振り返ったところ、キッチンの方から出て来たらしい優羽さんと目が合い俺はその彼が抱いている白い毛毬に目を見開いた。
「ほら、だから大丈夫だって…」
「ニイチ…っ!」
父さんと伊近を振り払い、優羽さん目掛けて走り出した俺にその優羽さんは驚いたように体を強張らせるが、構っちゃいられねぇ。
ガバッと優羽さんごとニイチを抱き締めた(といっても優羽さんは俺より少しデカいので抱き付いたように見えるだろうが)俺は、そのままニイチに頬擦りをしてやる。
ああよかった、ニイチは先に家に帰ってたんだな!
「…新名!?」
「優羽!お前、新名に勉強を教えるとかいう名目で何しやがった!優羽の姿を見ていきなり抱き付くなんて…っ!」
ってこの2人はよくなかったみたいだ。
しかし、今考えれば俺の行動が問題か…優羽さんには悪いことをした。
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