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私立月見里学園高等部
D
 しかし気付けばよくこんなに人が集まったもんだな・・・。

これは本格的にこの人ごみを掻き分けていくのは難しいぞ。

 さてどうしたものか。

伊近は俺の手を握ったまままたすっかりムスッとした表情に戻っているし、俺達を取り囲んでいる奴らはきゃーきゃー叫びながら押し合いへし合いまるでバーゲン会場だ。

空でも飛べればなどと思わず非現実なことを考えて、天を仰げば・・・いた。

「りゅ、龍之介・・・?」

何がってそう、あのお騒がせ生徒会長だ。

 バババババと傍迷惑な音が近付いてきていると思えば、学校の上空に旋回するヘリが1機。

なぜそれで龍之介だと分かったのかといえば・・・まあアレだけ機体にデカデカとアイツの顔写真が貼ってあれば、なあ。

 その騒音と舞い上がった風に俺達を囲んでいた奴らも驚いたように顔を上げると、次の瞬間にはきゃっきゃと歓声を上げ始める。

まったく、順応性がいい奴らだな。

「わ、何、生徒会長?相変わらず騒が・・・

『マイスィートシュガーベイビー!』

って俺の台詞遮ってんじゃねーよ!しかもその呼び方やめろってんだ!新名は俺のだっつってんだろ!」

 乱れる髪を押さえながら空を仰いだ伊近は、そんなぼやきを拡声器で拡張された龍之介の大声に遮られて、いや俺の呼び方にか?とりあえずご立腹のようだ。

中指を立てる行儀の悪い伊近に、しかし今はそれを注意している場合じゃない。

とにかく・・・。

「伊近!今の内だ、逃げるぞ!」

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