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私立月見里学園高等部
A
 脱力したように携帯の通話ボタンを押すと、黒崎がいなくなった部屋に居座っていた伊近もどうやら誰かと電話しているらしい。

「ニャー」

手持ちぶさたな俺は寄ってきたニイチを膝の上に乗せると、擦り付けて来る頭をわしゃわしゃと撫でてやる。

あーっ!やっぱりニイチは癒しだ。

マイナスイオンが出てるとしか思えん。

絶対にそうだな。

「お前は可愛いな」

 思わずそう漏らすと、電話が終ったらしい伊近に座っている腰にタックルをかまされて、慌ててニイチを顔の前まで抱き上げる。

「何だよ!?ニイチがびっくりするだろ?なーニイチー?」

「なー」

「ぐぬぬぬー!な、新名!俺は?」

拗ねたように頭を擦りつけて、駄々っ子のように見上げてくる伊近の頭をぽんぽんとおざなりに撫でてやった。

全く手のかかる奴だな…。

「えー!それだけかよ!?」

「はいはい、それより電話誰からだったんだ?」

「冷てぇ…あ、電話?ああ親父だよ親父。新名が話し中だったから俺に電話したんだとよ。全く…あー新名の匂いがする」

 頬を膨らませる伊近はそのまま俺の膝を枕にすると、腹に顔を埋めてくぐもった声でそんな声で呟く。

って何の匂いだよ…。

「んー何か興奮する匂い?」

「何だよそれは…。あ、そういや母さんが帰ってこいって」

「あー親父も同じこと言ってたな。何だ?今度はまた離婚するとか言ったりしてなー」

縁起でもないこと言ってんじゃないよ、お前は…。

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