私立月見里学園高等部
B ※微
「いつもの釣れない君も素敵だが、こうやって腕の中で大人しくしている君はなおいっそう素敵だ・・・」
耳元で囁かれる声はいつもと同じ、歯が浮くような台詞なのに、どこか違うように聞こえるのは何故だろう。
くちゅくちゅという濡れた音が直接耳に聞こえ、時折歯を立てられるたび体を跳ねさせる俺に、龍之介の手は更にエスカレートしていく。
「・・・って!!!何俺も流されてんだ!!!!!」
と、意外と手際のよい龍之介にあれよあれよと言う間に流されかけた俺だが、そもそも男の俺を押し倒すな!男の俺を・・・っ!!!!!
どうしても男がいいって言うなら他を当たってくれないだろうか。
自分の趣味を他人に押し付けるんじゃない!
いきなりの俺の怒声に驚いたらしい龍之介の隙を狙い、臍の辺りを擽る手を掴むと何か言おうとする前にそれを捻りあげ、怯んだところを形勢逆転とばかりに背中から押さえ込む。
「に、新名!?」
ったく・・・そんな縦に長いだけの(人のことは言えないが)アンタに誰が大人しく押さえ込まれるっていうんだよ!
一度ならず、二度までも優男にマウントポディションをとられるなんて、本当情けない・・・。
そもそもどっちもいきなりなんて卑怯だろうが!
と、2回分の恨みをこめて捻り上げる腕に力を込めれば、さっきまでの余裕たっぷりの態度はなんだったのか、半泣きになりながら許しを請う龍之介に溜息が漏れた。
こんな弱っちいやつに押し倒されるだなんて恥ずかしいったらない。
これは末代までの恥だな、とうっかり反応してしまった自分もろとも頭の中の引き出しに仕舞いこむと、本格的に泣き出しそうな龍之介をとりあえず解放してやった。
「い、痛いじゃないか!・・・それともハニーはもしかしてそういう趣味なのか?だったら話も違ってくるが、しかしどちらかと言えば俺も痛めつけたい・・・ってouch!」
半べそをかきながらもまた碌でもないことを言い出す龍之介の頭を叩いてやれば、恨めしそうな目を向けられる。
「新名っ!愛が痛い!愛が!」
・・・もう一生やってろ。
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