私立月見里学園高等部
A
加賀美が懸念したとおり、早速バスの座席で揉めた俺達は、グループ分けされた2人ずつ座るということで落ち着いたのだが、何となくどんより暗い雰囲気が漂っている。
「新名、こっち向いて」
「何で数馬が通路側に座ってんだよ!!!」
いや、どんより暗かったのは一瞬だけだ。
俺のすぐ後ろの席に着いた伊近はその隙間から顔を覗かせてくるし、通路を挟んで反対側に座ったから黒崎からはそんな抗議の声が飛んでくる。
「新名くーん!そこについてるトイレでエッチしよーよー!」
更にその後ろからは空のとんでもない台詞が飛んできて、俺はとりあえず寝た振りで過ごすことに決めた。
「なんかさ、やまなしってモテモテだよなぁ」
のほほんとお菓子を食べながら呟く結城に、溜息を吐けば、端から秦名の声が上がる。
「オォ!カズ、今日は冴えとるやないか!ほんま、巻き込まれる俺たちの身にもなって欲しいわぁ」
「俺もやまなしのこと好きだけどな」
「ってえええええ!?」
黒崎を押しのけて身を乗り出してきた秦名に、薄目を開けて様子を伺っていた俺は、更に深い溜息を吐いた。
「おい、数馬。お前、同じグループだからって新名に手ぇ出しやがったらただじゃおかねぇからな」
「クソ、お前なら大丈夫だと思ったのに・・・俺は誰が相手であろうと譲る気はないぜ!」
ドスの聞いた声で結城を脅す伊近に、闘志を燃やす黒崎。
「でもさ、俺月見里のことも黒崎のことも好きだぜ?もちろん利津も空も光も」
「ってお前はいちいちややこしいねん!!!!!」
ああ・・・なんか結城と一緒のグループって何だか疲れるような気がする・・・。
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