私立月見里学園高等部
聞いてない!
「あ…?俺言ってなかったかー??」
はははと呑気に告げられた加賀美の言葉に、1-Aの教室内は蜂の巣をつついたように騒がしくなる。
加賀美が今日の今日まで伝え忘れていたのは、明日に差し迫った交流会という名の、全校生徒でのレクリエーションだった。
その交流会というのが近県のコテージを貸し切っての1泊2日の小旅行らしいのだが。
「もー先生早く言ってよー!色々持って行くものの準備とか大変なんだよ!?まずローションでしょー、それからバイブにローターに…ゴムは1ダースくらいで足りるかな…って痛!」
「りーくーかーわー!てめぇ、何しに行くつもりだ!?何しに!!」
「えー!そんなの決まりきってんじゃん!新名くんとメイクラブするためでしょ!セッ…いったーい!!」
率先して騒ぎ出した空の頭を、名簿で2度ほどはたいた加賀美は、溜め息を吐いて今度は俺の方を向く。
「…安心しろ、お前と陸川は違うコテージだからな」
「はあ…」
ってまず何の心配してるんだ?
空は確かに騒がしいが、いなければいないで寂しいだろう。
「残念だな」
そう素直に感じたことを告げれば、加賀美は頭を抱え、空は嬉しそうにはしゃいでいた。
「…じゃあ気を取直してグループ分けを発表するぞー。各学年2人ずつの計6人で1つのコテージだからな」
と言って加賀美が委員長に…ちなみに渡辺だ。
眼鏡を掛けて委員長らしいからという理由で決められたそれだが、加賀美の指示と同時にプリントを配付し始めるその姿はまさに委員長の鑑だった。
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