私立月見里学園高等部
B
そんな相澤先輩から那月先輩がマイクを受け取った瞬間だった。
「ぃやー!蓮様〜!!」
「きゃー!」
と、ここまではまだ慣れつつある甲高い悲鳴だった。
しかし今までと違ったのは、その甲高い歓声に混じり、野太い雄叫びが湧き上がったことだ。
なんだ、なんだ!?
見れば先ほどまで比較的大人しかった体育会系の生徒達が総立ちで拳を突き上げており、ある意味さっきの相沢先輩以上の迫力がある。
若干引き気味の俺とは逆に、壇上の先輩はいつものことなのか慣れたもので、あのキラキラした笑みが崩れることはなかった。
「新一年生の皆さん、入学おめでとう。そして在校生の皆さん、おはようございます。今年度副会長に選ばれた2-Aの那月蓮(ナツキレン)です。みなさんのお手本になれるよう僕も精一杯頑張るので、どうぞよろしくお願いします」
歓声が止むのを待たず先輩が口を開けば、まるで示し合わせたかのように会場内は静けさを取り戻す。
聞き惚れるような美声で述べられた挨拶は、何より言っていることが至極まともだった。
もちろん生徒達からは拍手喝采。
なんて周りを観察している俺も賛同するように手を叩いてしまったのだが。
でも、その微動だにしない笑顔が恐ろしい気がするのは何故なんだろう・・・。
誰がどうみても”綺麗”な笑顔なのだが。
しかし、まだこれで2人目とか先が思いやられるな。
まったく、こんな中寝ていられる後ろの2人+我関せずな横の伊近が羨ましくてしょうがない・・・。
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