[携帯モード] [URL送信]
知らぬ間の愛
 
 ある日の夕方。せっちゃんと二人で辿る帰り道。
 夕焼け色に染まる電車内には誰もいなくて、ウチとせっちゃんの二人だけ。
 今日あった事とか、明日の事とかを話ながら時間は過ぎていく。
 どちらともなく会話がなくなって、二人だけの世界に訪れた静かな一時。
 そこに響く電車が刻む行儀の良い音と、ぽかぽかした夕日は、ウチの目蓋をゆっくりと落としてく……。
 そのまま眠ってしまうと思った時

「……あれ?」

 不意に感じた、肩への柔らかな重み。
 振り向くと、せっちゃんがウチに持たれかかって、静かに寝息をたてていた。

「先にされてしもうたな」

 いつもなら、ウチがせっちゃんに持たれて寝てしまうんやけど、今日は珍しく反対。
 起こさないように、そっと顔を覗き込む。
 せっちゃんの寝顔見るの、久しぶりやな……。
 その寝顔に見とれて、暖かい気持が溢れてくる。

「かわええな〜」

「ん……」

 あっ、起こしてしもうたかな?

「……すぅ……すぅ」

 よかった……

「ゆっくり休んでな……」

 触れたい気持を我慢して、ウチは前に向き直る。
 そしてまた訪れる、静かな時間。
 さっきと違うのは、自分の心臓の音が高くなっている事。
   
 トクン、トクンと、高鳴る鼓動。
 せっちゃん、聞こえる?
 ウチの“恋する気持”感じる?
 せっちゃんのこと大好きやから、こんなにドキドキしてるんやで。

「……このちゃん」

「――!?」

 急に名前を呼ばれて、「起きたんかな?」ってビックリしたけど、寝言やったみたい。
 せっちゃんは目を閉じたまま、静かに眠っている。

「このちゃん……」

 もう一度、せっちゃんがウチのことを呼ぶ。

「な〜に、せっちゃん?」

 それに答えてみる。

 そしたら、またせっちゃんから言葉が返ってきた。

「……しょ…やで…」

「ん? な〜に?」

「…ず〜っと、一緒やで……」

 ちゃんと、聞こえとったみたい……

「うん。ず〜っと一緒やで」

 愛する人の温かさを感じながら、ウチは幸せな時間を過ごした。

「大好きやで。せっちゃん」

 せっちゃんが起きたときに教えたったら、顔真っ赤にして照れるんやろな〜

「んん……」

 あ、言ってるうちから起きた。

「せっちゃん、おはよ」

「あ、おはようございます、お嬢様……」

「あんな、さっきせっちゃんな――」





 


あきゅろす。
無料HPエムペ!