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これが最高のバッドエンド





「ねぇ」

「んだよ」

「いい加減退いてくれない?」

「何で」


わかったでも、嫌だという意思表示でもなく何で、と疑問が返ってきたことに苛ついた。顔に出したつもりはなかったのだが、それに気が付いたらしいシズちゃんに頭を撫でられた。しかも無駄に優しく。そんなことする位なら頭退けろよ。


半時間ほど前だ。ソファに座って本を読んでいると、夕飯(今夜はシチューである)の買い出しを終えたシズちゃんが帰ってきた。おかえり、ありがとそこに置いといてと目線は本のまま(如何せんあの時は本に夢中だった)で言うと、シズちゃんは一言おう、と返事をして買い物袋をダイニングの上に置き、俺の横に座った。そして何をするわけでなく、只座っているのは退屈だったのであろう彼は突然俺の太股に頭を置いた。所謂膝枕だ。
別に嫌ではなかったし、読書の邪魔をされるわけではないのでそのままにしておいた、のだが下からの視線が痛い。目からビームでも出てるんじゃないか。その上何も喋らないので、居心地悪いことこの上なかった。
――で、冒頭に至る。


「何でって、重いからに決まってるでしょ。何で頭の中空っぽなのに無駄に質量はあるの?」

「手前……。」


――あ、苛ついてる。
最近では喧嘩もあまりしなくなった。恋人という関係上、仕様がないといえば仕様がないのだが、自分としては少し物悲しく思う。嗚呼ゴミ箱投げつけられたり問答無用で殴られそうになってた頃が懐かしい。


「シズちゃん、」

「本、そんなに面白いか。」

「……、暇なの?」

「死ぬ程な」


暇は人を殺せるというが、退屈であの平和島静雄が死ぬなんて皮肉意外の何物でもない。
クスクスと笑いながら(我ながら嫌な笑い方だ)、伸ばされた彼の手を握り返した。


「死んじゃうの?」

「ああ」


だから構えとでも言うように、金髪の猛獣に手の甲を口付けられる。シズちゃんて素面でこんな事するから時々恥ずかしいんだよね。


「池袋じゃ、こんなこと絶対出来ないなぁ」

「じゃあ今すればいいだろ」

「それもそうだね」



それから二人で少し笑って、触れるだけのキスをした。











これが最高の
バッドエンド


僕らにとってハッピーエンドには程遠い




お題元/確かに恋だった






当初殺し合いしてた二人にとってはバッドエンド。けど幸せ。大いなる矛盾。


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あきゅろす。
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