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地獄へってあげましょう




「なんと…!愛殿!これは餓鬼とやらに憑かれたのでござるか!?」
「そうだよ、だから斬っちゃ駄目!」



四方からやってくる、餓鬼に憑かれてしまった兵や女中達に囲まれて愛達は背中合わせに武器を構えた。



『旨ソウナ魂ガ沢山アルゾ!』
『腹ガ減ッタ!ハヤク喰オウ』
『殺セ!』
『殺シテ喰オウ!!』



餓鬼達が兵の上でギャアギャアと騒いでその人間の体を使って襲い掛かってきた。



「佐助と幸村は信玄様を護りなさい!わたしと飛龍で餓鬼は倒します」
「だがこの数…!」
「お前ら餓鬼が見えて無いだろ?それにおっさんの武器はこの戦いには分が悪いからな!」
「…っ。分かった!大将、飛龍の言う通りだから今回は出番無しね!」
「むぅ…仕方あるまい」



不服そうな顔をしたものの信玄は幸村と佐助に任せたようだ。

それを見て愛と飛龍は餓鬼退治に集中した。



「来なさい…わたしが地獄へ送り返してあげる」

『 !! 麒麟ガ居ルゾ!』
『本当ダ』
『麒麟ガ何故此処ニ』
『旨ソウダ』



愛に気付いたのか餓鬼達は殆どが愛へと群がった。



「お前らなんかに喰わせるかよ!」



愛の前に出て、飛龍は右手を一薙ぎする。するとばたりばたりと兵士が倒れた。

愛は飛龍と背中合わせになり襲い掛かってくる女中の包丁や薙刀をいなし、肩に居る餓鬼を滅していく。



「凄いのぅ…」
「誠にござります!飛龍殿も愛殿もお強い!」
「ほらほら二人とも余所見しない!愛ちゃんに見惚れるのは分かるけどさ」
「破廉恥であるぞ佐助ェェェ!!!!」



そんな幸村達のもとに、不意に影が降り掛かった。

殺気を感じた幸村は二槍を前に回して防御体勢を取るが───



ドガッ

「ぐぁッ!!」
「「旦那(幸村)!!!!」」



吹き飛ばされ、襖を突き抜け外まで飛んで行った。



「っ何だ!?」
「佐助!信玄様!離れて!!」



愛が叫ぶと同時に佐助と信玄はそのモノの姿を認識した。



『何ダァ?オ前等人間二何テコズッテルンダヨ?』

「デッケェのが来ちゃったねぇ…」



今迄の兵士達に憑いていたような手のひら程の餓鬼の比では無く、人間よりも大きいモノが其処に立っていた。



「大将!」
「分かっておるわ!!」



佐助と信玄は直ぐに頭の餓鬼から離れる。信玄は軍配を構えた。



「飛龍、わたしが行って来るわ」
「ああ!任せた!」



飛龍に後ろから襲い掛かろうとしていた兵士に憑く餓鬼を倒し、愛は懐から短刀を取り出しながら佐助達のもとへと走った。

走りながら白い鞘から抜き取った刃は、愛の瞳と同じ真紅の色をしている。



『オ前等ノ魂ハ旨ソウダ…』
「アハー不味いよー?俺様の魂は毒入りですってね!」
『減ラズ口モ其処マデダ』
「お主こそ、自分の後ろを見てはどうじゃ?」



迫り来る頭餓鬼に信玄が言った刹那、



「地獄へ戻れ、飢えし者達」

『グァァ!?』



ドスリと頭餓鬼の左肩を貫いた赤い刃はそのまま下へと降ろされる。



『馬鹿ナ…何故麒麟ガ此処ニ…!』
「地獄へ戻りなさい、そして早く罪を償って来なさい」



ガッと畳に突き刺さった真紅の短刀を中心に黒い、真っ暗な穴が開く。

その中へ、頭餓鬼はずるずると吸い込まれていき小さな餓鬼達もどんどん穴の中へと引き込まれていった。



『グァァァアア!!』

「…さようなら。また逢いましょう」



餓鬼達全員が暗い穴の中へと落ちると穴はまた無かったかの様に閉じて、只の畳に戻った。

愛は畳に刺さった短刀を抜いて、鞘に納める。



「…終わったの?」



口を開かないで俯いたままの愛に恐る恐る佐助が声を掛ける。



「うん終わったよ。怪我は無かった?」
「あ、うん」



顔を上げた愛は先程までとは違いへにゃりと笑うものだから佐助は力が抜けて生返事を返した。



「愛、今の穴はなんじゃ?」
「さっきのは地獄に妖を還す、送帰円(ソウキエン)というものなんです」
「ふーん…って忘れてた!!旦那!大丈夫ー!?」



佐助は顔を青くして幸村が吹き飛んでいった庭に走っていった。







‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
佐助、忘れるなよ!

…送帰円。はいオリジナルですすみません。
餓鬼についてですが追記としてちょっとまた説明を前回のに足しておきました。よかったら見てください。

追記:小さい弱い餓鬼は幸村達には見えないけど強い頭(カシラ)の餓鬼は見える設定です。因みにお館様は全部見えてます。分かりにくくてすみません!

090214.090216追記.

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