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放火魔は必ず現場に戻るという(ラムコト)


捕まっても知らないよ、ばーか。















「おばあちゃん、こんにちは。」
今日で何日目だろ。ジョウトが"平和"になった日から毎日ここに通いつめてる。
ひゅ、ひゅー。おばあちゃん、また入れ歯の調子が悪いみたい。
「今日は誰か、来なかった?」
「今日も誰も、来てないだよ。」
「...そっか。」
まぁ、上がんなさい。おばあちゃんが言うものだから、靴を揃えて脱ぎお邪魔させてもらう。
「仏壇、避けてあるからねぇ。」
「....ありがと。」

ほんとは知ってる。おばあちゃん、早く此処を埋めたいってこと。そうだよね、此処は悪の組織が悪いことをするために作ったアジトだもの。
彼らが居なくなった今、わたしは家主であるおばあちゃんに此処を埋めないでと頼んだ。どうしても、会いたい人がいるから。
どこにいるのか解らなくて、それでも会いたくて。今日もわたしは、初めて出会った此処で彼を待ってる。
解ってる、もう誰も此処には来ない。わたしだけ。一人だ。だってそうしたのはわたし。わたしが彼らの邪魔をした。わたしが、彼を倒したから。
誰も近寄りたがらない此処で、わたしは今日も待ってる。
「...寒い、なぁ。」
地下、もう電気も通っておらず空調の効いていない此処は酷く冷えた。七分袖で来たのが間違い、でも、あの時と同じ恰好をしていないと、彼に気づいてもらえない。

「暑いなあ。」

後ろから声。わたし以外の声。聞き覚えのある声。一番聞きたかった、声。
「やぁお嬢さん。」
振り替えると、見知らぬ長身の紳士の姿があった。スーツの上にコートを二枚も羽織った不思議な姿。声には聞き覚えがあるのに、変なの。
「寒いと思って随分厚着してしまいました。」
寒いのなら一枚来てくださいな、棒読みの敬語で言われた。渡されたコートを羽織ると、匂いだことのある煙草の匂いがした。
「一枚じゃ、まだ寒いよ。」
「そう、それならもう一枚。」
「違う、コートはもういらない。耳を貸して?」
私の背の高さまでしゃがむ、彼の耳元に顔を近付けて探す。あった、頬と腮の境目。
そこに爪をたてて思い切り引っ張った。びりり、と音を立てて、ご対面。
「あれ、バレちゃった。」
へらへら笑う、馬鹿な犯罪者の頬を思い切りつねってやった。

「会いたかった。」



(知ってる?)
(放火魔は必ず犯行現場に帰って来る)
(そこで起こる現象を好奇の目で見るために)





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開設時から下書きフォルダに眠っていたものを書き上げてみました。
予備校に通っていた頃、デッサンの最中に思い付いて、コッソリとエスキース帳の隅にメモしまくったものです。
当時はラムアテよりラムコト派でした...


100318

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あきゅろす。
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